[場所1E303,203(月曜日3,4限)]
前回残した定義があったのでそれを説明をしました。
定義5.1
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。
$F\subset X$ が $F^c\in\mathcal{O}$ であるとき、$F$ を閉集合という。定義5.2
閉集合全体からなる集合を閉集合系という。
閉集合系とは、$\mathcal{C}=\{F\subset X|F^c\in \mathcal{O}\}$ であり、
以下を満たす。
(I) $X,\emptyset\in \mathcal{C}$
(II) $F_1\cdots, F_n$ が有限個の閉集合とすると、$F_1\cup\cdots \cup F_n\in \mathcal{C}$
を満たす。
(III) $\{F_\lambda\in \mathcal{C}|\lambda\in \Lambda\}$ を閉集合族とすると$\cup_{\lambda\in \Lambda}F_\lambda\cap \in \mathcal{C}$を満たす。
定義5.3
$(X,\mathcal{O}_X)$ と $(Y,\mathcal{O}_Y)$ を位相空間とする。
$\mathcal{C}_X,\mathcal{C}_Y$ を $X,Y$ の閉集合系とする。
写像 $f:X\to Y$ が
$\forall U\in \mathcal{O}_X\Rightarrow f(U)\in \mathcal{O}_Y$ を満たすとき$f$ は開写像という。
また、
$\forall F\in \mathcal{C}_X\Rightarrow f(F)\in \mathcal{C}_Y$ を満たすとき $f$ は閉写像という。
また、$f$ が全単射であり、$\forall U\in \mathcal{O}_X\Leftrightarrow f(U)\in \mathcal{O}_Y$
が成り立つとき、$f$ は同相写像という。
例
$(0,1)\to {\mathbb R}_{>0}$ を
$x\mapsto \tan(x)$ は $(0,1)$ と ${\mathbb R}_{>0}$ の間の同相写像を与えます。
全単射であることはすぐわかります。
また、連続であることは、$\tan (x)$ が連続関数であることからわかります。
(連続関数であることは位相空間同士の連続写像であることと同値であるから)
また、$\text{Arctan}(x)$ が連続であることから、 $\tan(x)$ の逆写像も連続となります。
このようにして$(0,1)$ と ${\mathbb R}_{>0}$ が連続であることがわかります。
また、${\mathbb R}\to {\mathbb S}^1=\{(x,y)\in{\mathbb R}^2|x^2+y^2=1\}$
が全射な連続な開写像であることがわかるのですが、
これはまた後日行います。
例
$(X,\mathcal{O})$ を密着位相ではない位相空間とします。
このとき、
$i:(X,\mathcal{O})\to (X,\{\emptyset,X\})$ を恒等写像とすると、
$i$ は連続な全単射で、同相写像ではありません。
もし同相なら、開集合系の濃度は特に等しくなります。
定理5.1
$(X,\mathcal{O}_X)$ と $(Y,\mathcal{O}_Y)$ $(Z,\mathcal{O}_Z)$ を位相空間とする。
$f:X\to Y$ と $g:Y\to Z$ が連続写像とする。
このとき、$g\circ f$ も連続写像となる。
(証明)
$\forall U\in \mathcal{O}_Z$ とすると、$f^{-1}(U)\in \mathcal{O}_Y$ が成り立ち、
さらに、$g^{-1}(f^{-1}(U))=(f\circ g)^{-1}(U)\in \mathcal{O}_X$ が成り立つので、
$g\circ f$ は連続写像となります。
今回は、
位相空間の内部、閉包、境界
についてやりました。
まずは、内部と閉包と境界を定義します。
定義5.4 $(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。
$A^\circ$ を $A$ に包まれる最大の開集合と定義する。
$\bar{A}$ を $A$ を包む最小の閉集合と定義する。
$\partial A=\bar{A}\setminus A^\circ$ と定義する。
とくに、$A^\circ$ は開集合であり、$\bar{A}$ は閉集合になります。
ここで次の定理を示しておきます。
定理5.2
(1) $A^\circ=\{a\in X|\exists U\in \mathcal{O}(a\in U\subset A)\}$
(2) $\bar{A}=\{a\in X|\forall U\in\mathcal{O}(a\in U\to A\cap U\neq \emptyset\}$
(3) $\partial A=\{a\in X|\forall U\in \mathcal{O}(a\in U\to (A\cap U\neq \emptyset\land A^c\cap U\neq \emptyset)\}$
(証明)
(1) まず、(1) の右辺を $A’$ とします。
$A’=\cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U$ となることを示します。
$x\in A’$ ならば、$U\in \mathcal{O}$ が存在して $x\in U\subset A$ を満たします。
とくに、$x\in \cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U$ が成り立ちます。
一方、$x\in \cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U$とすると、$\exists U\in \mathcal{O}$
であり、$x\in U$ であるが、$U\subset A$ であることから $x\in A’$ となり、
合わせて、$A’=\cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U$ が示せました。
最後に、$A’$ が $A$ に包まれる最大の開集合であることを証明をします。
まず、$A’$ は開集合の和集合なので、開集合です。
もし、$A'\subset A''\subset A$ となる開集合 $A’’$ が存在したとすると、
$A’’$ は $A’’\subset A$ かつ $A\in \mathcal{O}$ を満たすので、
$A’’\subset \cup_{U\subset A,U\in \mathcal{O}}U=A'$ であるから、
$A’’=A’$ となります。
つまり、$A’’$ は$A$ に包まれる最大の開集合ということになります。
(2) この(2) の右辺を $B’$ とすると、
$B’=\cap_{A\subset F,F\in \mathcal{C}}F$ となることを示します。
$(B’)^c=\{a\in X|\exists U\in \mathcal{O}(a\in U\to A\cap U=\emptyset)\}=\{a\in X|\exists U\in \mathcal{O}(a\in U\subset A^c)\}=\cup_{U\subset A^c,U\in\mathcal{O}}U$
よって、
$B’=\cap_{U\subset A^c,U\in\mathcal{O}}U^c=\cap_{A\subset F,F\in\mathcal{C}}F$
となります。
ここで、$A\subset B’’\subset B’$ となる閉集合とすると、
$B’’\supset \cap_{A\subset F,F\in \mathcal{C}}F=B’$ となるので、
$B’=B’’$ となります。
よって、$B’$ は $A$ を包む最小の閉集合ですので、$B’=\bar{A}$ となります。
ゆえに(2) が成り立ちます。
(3) は省略します。
このとき、
$A^\circ$ を $A$ の内部といい、$A^\circ$ の点を $A$ の内点といい、
$\bar{A}$ を $A$ の閉包といい、$\bar{A}$ の点を $A$ の触点といいます。
また、$\partial A$ を $A$ の境界といい、$\partial A$ の点を $A$ の境界点といいます。
次を証明をしました。
定理5.3
$A\in \mathcal{O}\Leftrightarrow A=A^\circ$
$A\in \mathcal{C}\Leftrightarrow A=\bar{A}$
(証明)
$A\in \mathcal{O}$ であるとすると、$A$ に包まれる開集合の最大は $A$ 自身であり、
$A^\circ =A$ がなりたち、逆に $A=A^\circ$ であるなら $A^\circ$ は開集合であるから
$A\in \mathcal{O}$ が成り立ちます。
$A\in\mathcal{C}$ であるなら、$A$ を包む最小の閉集合は $A$ 自身が
存在するので、$\bar{A}=A$ となります。逆に、
$\bar{A}=A$ であるなら、$\bar{A}$ は閉集合であるから $A\in \mathcal{C}$ です。
定理5.4
$f:X\to Y$ が連続であることは以下とそれぞれ同値である。
(i) $\forall V\in \mathcal{C}_Y$ ならば $f^{-1}(V)\in \mathcal{C}_X$ である。
(ii) $A\subset X\Rightarrow f(\bar{A})\subset \overline{f(A)}$ である。
(証明) (i) と同値であることはすぐわかるので省略します。
(ii) と同値であることを示します。
もし $f$ が連続であるとします。$A\subset X$ に対して
$f^{-1}(\overline{f(A)})$ は閉集合であり、$A$ を包むので、
$\bar{A}\subset f^{-1}(\overline{f(A)})$ となります。
よって、$f(\bar{A})\subset \overline{f(A)}$ となります。
もし、$f(\bar{A})\subset \overline{f(A)}$ を満たすとします。
$\forall F\in \mathcal{C}_Y$ とします。
$f(\overline{f^{-1}(F)})\subset\overline{f(f^{-1}(F))}=\overline{F}=F$
よって、$\overline{f^{-1}(F)}\subset f^{-1}(F)\subset \overline{f^{-1}(F)}$ となりますので
$f^{-1}(F)$ は閉集合となります。
よって $f$ は連続となります。$\Box$
最後に近傍系を定義しました。
定義5.5
$X$ を集合とする。$\forall x\in X$ に対して $\mathcal{N}(x)\subset \mathcal{P}(X)$
を次を満たすものとする。
(1) $\mathcal{N}(x)\neq \emptyset\land (V\in \mathcal{N}(x)\to x\in V)$
(2) $\forall V_1,V_2\in \mathcal{N}(x)(V_1\cap V_2\in \mathcal{N}(x))$
(3) $\forall V\in \mathcal{N}(x)(V\subset W\to W\in \mathcal{N}(x))$
(4) $\forall V\in \mathcal{N}(x)\exists W\in \mathcal{N}(x)(y\in W\to V\in \mathcal{N}(y))$
このとき、$\mathcal{N}(x)$ を $x$ の近傍系といい、$\mathcal{N}(x)$ の元を
$x$ の近傍という。