[場所1E202-203(金曜日6限)]
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スライド
今回は、イプシロンエヌ論法とイプシロンデルタ論法についてやりました。
イプシロン-エヌ論法
数列 $a_n$ が $a$ に収束することを $\epsilon$ と $N$ を使って、以下のように定義します。
任意の $\epsilon>0$ に対してある自然数 $N$ が存在し、
$n>N$ なる任意の自然数 $n$ に対して、
$$|a_n-a|<\epsilon$$
が成り立つとき、
$$\lim_{n\to \infty}a_n=a$$
とかく。
つまり、数列 $a_n$ が $a$ に収束するということは、
ある番号から先は全て任意に決めた $a$ の近くの範囲 $(a-\epsilon,a+\epsilon)$ の中に
入っているということです。
確かに、このような定義だと、数列の収束をうまく言い表していますね。
これにより、数列 $a_n$ が収束するかどうかを調べることができます。
$a_n=\frac{1}{n}$ や $a_n=\frac{1}{1+e^n}$ $a_n=\sqrt{n+1}-\sqrt{n}$
などを解いてもらいました。
解き方などは、上のスライドを見てください。
$a_{n+1}=1+\frac{1}{a_n}$ かつ $a_1=1$ を満たす数列が
$a=\frac{1+\sqrt{5}}{2}$ に収束することを示しましょう。
$\frac{\sqrt{5}-1}{2}=\frac{1}{a}$ を用いると、
$$|a_{n+1}-a|=|1+\frac{1}{a_n}-\frac{1+\sqrt{5}}{2}|=\frac{1}{a_n}|a_n(\frac{\sqrt{5}-1}{2})-1|$$
$$=\frac{1}{a_na}|a_n-a|<\frac{1}{a}|a_n-a|$$
となります。
よって、この不等式を用いることで、
$|a_n-a|<\frac{1}{a^{n-1}}|a_1-a|=\frac{1}{a^n}$ となります。
今、$\epsilon>0$ を任意に取ります。
このとき、$N=\lceil -\log_a\epsilon\rceil$ とすると、
$a^N>a^{-\log_a\epsilon}>1/\epsilon$
$n>N$ となる任意の $n$ に対して、
$$|a_n-a|<\frac{1}{a^n}<\frac{1}{a^N}<\epsilon$$
となるので、$\epsilon$-$N$ 論法により、
数列 $a_n$ は $a$ に収束する。
イプシロン-デルタ論法
関数の連続性についての話もやりました。
関数 $y=f(x)$ が $x=a$ において連続であることは、
任意の $\epsilon$ に対して、ある $\delta$ が存在して、
$|x-a|<\delta$ を満たす任意の $x$ に対して、$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ を満たす
となります。
つまり、値域の $f(a)$ の(どんなに縮めた)近くの領域 $|f(x)-f(a)|<\epsilon$ に対しても、
そこに入って来る $a$ の近くの領域 $|x-a|<\delta$ がある。
ただし、$|x-a|<\delta$ の全ての $x$ が $|f(x)-f(a)|<\epsilon$ に入って
こなければなりません。
つまり、連続ではないというのは、ある程度 $\epsilon$ で狭めた
$f(a)$ の近くの領域には、$|x-a|<\delta$ となる $x$ で、
$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ に全て入ってこれないものが存在することを言います。
例えば、
$f(x)$ を $x$ の符号を与える関数とします。
つまり、$x>0$ なら、$f(x)=1$、$x=0$ なら $f(x)=0$、かつ、$x<0$ なら $f(x)=-1$
とします。
このとき、$x=0$ で、この関数が不連続であることを示します。
感覚としては明らかですが。
$\epsilon=1/2$ としましょう。
このとき、$|y-0|<1/2$ において、いかなる $\delta>0$ に
対しても、$|x-0|<\delta$ となる $x$ が存在して、その像 $y$ が
$|y|<1/2$ にすることができないものが存在します。
例えば、$x>0$ ならば、$f(x)=1$ ですから、$|f(x)|<1/2$ にすることができません。
$x<0$ でもそうです。
ですので、この関数は不連続となります。
次に、$\epsilon$-$\delta$ 論法を用いて関数が連続であることを示してみましょう。
(証明)
$y=x^2$ が $x=a$ で連続であることを示します。
まず、$\epsilon>0$ を任意に取ります。
次に、$\delta=\min\left\{1,\frac{\epsilon}{1+2|a|}\right\}$ とします
$|x-a|<\delta$ となる $x$ を任意に取ります。
このとき、
$|x+a|\le |x-a+2a|\le |x-a|+2|a|\le \delta+2|a|\le 1+2|a|$
となります。よって、
$|f(x)-f(a)|=|x-a||x+a|< \delta(1+2|a|)\le \epsilon$
となるので、
$f(x)$ は $x=a$ で連続となります。
この証明はわかるけれども、何をしているかわからないという人のために
書いておきます。
$|f(x)-f(a)|$ は、$|x-a|<\delta$ の$\delta$ が小さくなるに従って、
小さくなっていかなければならないが、
$|x-a||x+a|$と分けたことで、小さくなる部分 $|x-a|$ とそうでもない部分 $|x+a|$
が明確になる。$|x-a|<\delta$ となる $x$ を任意にとったとき、
$|x+a|$ はそれほど大きくはならない。しかし、$|x-a|$ の部分はどんどん小さくできる。
実際、任意に与えた $\epsilon$ に対してそれよりは小さくできる。
連続性を示すには、$\epsilon$ に対して、$\delta$ をどれほど小さくとっておけばよいか?
が問題でした。
いきなり、$\delta$ として、$\delta=\min\left\{1,\frac{\epsilon}{1+2|a|}\right\}$
としていますが、これはいきなり思いつくのではなく、
最後の式から、$\delta(1+2|a|)\le \epsilon$ を満たすように、$\delta$ を取っておけばよい
ことがわかるので、
$\delta\le \frac{\epsilon}{1+2|a|}$ とすればよいということがわかります。
証明の途中で $|x+a|$ がそれほど大きくならないことを示すために、
$|x+a|$ が $\delta$ の評価式が入っていると少し面倒なので、
$\delta\le 1$ を使いました。$\delta\le 2$ でもかまいません。
結局、そのどちらよりも小さくしておけばよいのだから、
$\delta=\min\left\{1,\frac{\epsilon}{1+2|a|}\right\}$ としたわけです。
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今回は、イプシロンエヌ論法とイプシロンデルタ論法についてやりました。
イプシロン-エヌ論法
数列 $a_n$ が $a$ に収束することを $\epsilon$ と $N$ を使って、以下のように定義します。
任意の $\epsilon>0$ に対してある自然数 $N$ が存在し、
$n>N$ なる任意の自然数 $n$ に対して、
$$|a_n-a|<\epsilon$$
が成り立つとき、
$$\lim_{n\to \infty}a_n=a$$
とかく。
つまり、数列 $a_n$ が $a$ に収束するということは、
ある番号から先は全て任意に決めた $a$ の近くの範囲 $(a-\epsilon,a+\epsilon)$ の中に
入っているということです。
確かに、このような定義だと、数列の収束をうまく言い表していますね。
これにより、数列 $a_n$ が収束するかどうかを調べることができます。
$a_n=\frac{1}{n}$ や $a_n=\frac{1}{1+e^n}$ $a_n=\sqrt{n+1}-\sqrt{n}$
などを解いてもらいました。
解き方などは、上のスライドを見てください。
$a_{n+1}=1+\frac{1}{a_n}$ かつ $a_1=1$ を満たす数列が
$a=\frac{1+\sqrt{5}}{2}$ に収束することを示しましょう。
$\frac{\sqrt{5}-1}{2}=\frac{1}{a}$ を用いると、
$$|a_{n+1}-a|=|1+\frac{1}{a_n}-\frac{1+\sqrt{5}}{2}|=\frac{1}{a_n}|a_n(\frac{\sqrt{5}-1}{2})-1|$$
$$=\frac{1}{a_na}|a_n-a|<\frac{1}{a}|a_n-a|$$
となります。
よって、この不等式を用いることで、
$|a_n-a|<\frac{1}{a^{n-1}}|a_1-a|=\frac{1}{a^n}$ となります。
今、$\epsilon>0$ を任意に取ります。
このとき、$N=\lceil -\log_a\epsilon\rceil$ とすると、
$a^N>a^{-\log_a\epsilon}>1/\epsilon$
$n>N$ となる任意の $n$ に対して、
$$|a_n-a|<\frac{1}{a^n}<\frac{1}{a^N}<\epsilon$$
となるので、$\epsilon$-$N$ 論法により、
数列 $a_n$ は $a$ に収束する。
イプシロン-デルタ論法
関数の連続性についての話もやりました。
関数 $y=f(x)$ が $x=a$ において連続であることは、
任意の $\epsilon$ に対して、ある $\delta$ が存在して、
$|x-a|<\delta$ を満たす任意の $x$ に対して、$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ を満たす
となります。
つまり、値域の $f(a)$ の(どんなに縮めた)近くの領域 $|f(x)-f(a)|<\epsilon$ に対しても、
そこに入って来る $a$ の近くの領域 $|x-a|<\delta$ がある。
ただし、$|x-a|<\delta$ の全ての $x$ が $|f(x)-f(a)|<\epsilon$ に入って
こなければなりません。
つまり、連続ではないというのは、ある程度 $\epsilon$ で狭めた
$f(a)$ の近くの領域には、$|x-a|<\delta$ となる $x$ で、
$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ に全て入ってこれないものが存在することを言います。
例えば、
$f(x)$ を $x$ の符号を与える関数とします。
つまり、$x>0$ なら、$f(x)=1$、$x=0$ なら $f(x)=0$、かつ、$x<0$ なら $f(x)=-1$
とします。
このとき、$x=0$ で、この関数が不連続であることを示します。
感覚としては明らかですが。
$\epsilon=1/2$ としましょう。
このとき、$|y-0|<1/2$ において、いかなる $\delta>0$ に
対しても、$|x-0|<\delta$ となる $x$ が存在して、その像 $y$ が
$|y|<1/2$ にすることができないものが存在します。
例えば、$x>0$ ならば、$f(x)=1$ ですから、$|f(x)|<1/2$ にすることができません。
$x<0$ でもそうです。
ですので、この関数は不連続となります。
次に、$\epsilon$-$\delta$ 論法を用いて関数が連続であることを示してみましょう。
(証明)
$y=x^2$ が $x=a$ で連続であることを示します。
まず、$\epsilon>0$ を任意に取ります。
次に、$\delta=\min\left\{1,\frac{\epsilon}{1+2|a|}\right\}$ とします
$|x-a|<\delta$ となる $x$ を任意に取ります。
このとき、
$|x+a|\le |x-a+2a|\le |x-a|+2|a|\le \delta+2|a|\le 1+2|a|$
となります。よって、
$|f(x)-f(a)|=|x-a||x+a|< \delta(1+2|a|)\le \epsilon$
となるので、
$f(x)$ は $x=a$ で連続となります。
この証明はわかるけれども、何をしているかわからないという人のために
書いておきます。
$|f(x)-f(a)|$ は、$|x-a|<\delta$ の$\delta$ が小さくなるに従って、
小さくなっていかなければならないが、
$|x-a||x+a|$と分けたことで、小さくなる部分 $|x-a|$ とそうでもない部分 $|x+a|$
が明確になる。$|x-a|<\delta$ となる $x$ を任意にとったとき、
$|x+a|$ はそれほど大きくはならない。しかし、$|x-a|$ の部分はどんどん小さくできる。
実際、任意に与えた $\epsilon$ に対してそれよりは小さくできる。
連続性を示すには、$\epsilon$ に対して、$\delta$ をどれほど小さくとっておけばよいか?
が問題でした。
いきなり、$\delta$ として、$\delta=\min\left\{1,\frac{\epsilon}{1+2|a|}\right\}$
としていますが、これはいきなり思いつくのではなく、
最後の式から、$\delta(1+2|a|)\le \epsilon$ を満たすように、$\delta$ を取っておけばよい
ことがわかるので、
$\delta\le \frac{\epsilon}{1+2|a|}$ とすればよいということがわかります。
証明の途中で $|x+a|$ がそれほど大きくならないことを示すために、
$|x+a|$ が $\delta$ の評価式が入っていると少し面倒なので、
$\delta\le 1$ を使いました。$\delta\le 2$ でもかまいません。
結局、そのどちらよりも小さくしておけばよいのだから、
$\delta=\min\left\{1,\frac{\epsilon}{1+2|a|}\right\}$ としたわけです。
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