2018年5月20日日曜日

外書輪講I(第4回)

[場所1E503(月曜日5限)]

HPに行く

今回は、Miniature 2 の途中からとMiniature 3,4の途中まで終わりました。

Miniature 2
は、Fibonacci 数列の一般項を見つける方法です。

${\mathbb R}^\infty=\{(a_n)|a_n\in {\mathbb R},n\in{\mathbb N}\}$
を実数を係数とする数列の空間を表します。

この数列は無限次元でしたが、
$W=\{(a_n)\in{\mathbb R}^\infty|a_{n+2}=a_{n+1}+a_n,n\in{\mathbb N}\}$
として条件を入れると、有限次元となります。
この場合、次元は2です。

$\tau_1,\tau_2$ を $\tau^2-\tau-1=0$となる異なる2つの解とするとき、
$${\bf u}=(\tau_1^0,\tau_1^2,\cdots, \tau_1^n,\cdots)$$
$${\bf v}=(\tau_2^0,\tau_2^2,\cdots, \tau_2^n,\cdots)$$
は、$W$ の元に含まれており、

これらは、一次独立であることが示されます。
$W$ が2次元であることは、すべての $W$ の元がこれらの一次結合であること
を示されれば、$\dim(W)=2$ であることがわかります。
つまり、${\bf u},{\bf v}$ は $W$ の基底となります。

この2つの元 $\{{\bf u},{\bf v}\}$ の他の2つ一次独立の元を使っても
同じように $W$ の全ての元をつくることができます。

系として、次のようなフィボナッチ数列
$$F_0=0, F_1=1, F_2=1,\cdots, $$
を ${\bf u}, {\bf v}$ の一次結合で書くこともできますので、
$F_n=\alpha \tau_1^n+\beta\tau_2^n$ のように書くことができます。
この式は、任意の $n$ に対して成り立ちますが、$\alpha,\beta$ は $n$ によらない定数です。

ここで、$\tau_1=\frac{1+\sqrt{5}}{2}, \tau_2=\frac{1-\sqrt{5}}{2}$ 
となりますので、$\alpha=\frac{1}{\sqrt{5}}$, $\beta=-\frac{1}{\sqrt{5}}$ 
であるから結局、

$$F_n=\frac{1}{\sqrt{5}}\left(\left(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^n-\left(\frac{1-\sqrt{5}}{2}\right)^n\right)$$

と計算できます。


Miniature 3
は、Odd townクラブの話です。
この話は、極値集合論の話(組み合わせ数学の領域の話)です。

「The Clubs of Odd town 」とは、以下のような話です。
$n$ 人の住民はクラブを作るのが好きである。
住民はいくらでもクラブを作るので、それを制限するために
以下の条件を設けた。

  • 各クラブに入る人数は奇数である。
  • 任意の2つのクラブに対して、そのクラブに共通して入っている人の数は偶数である
このとき、クラブの数 $m$ は $n$ 以下となる。
この話は以前も書いたので、こちらにリンクを貼っておきます。

この不等式は、線形代数を使って示すことができます。
 $i=1,2.\cdots, m$ として、$C_i$を名前が $i$ のクラブとする。
$j\in C_j$ として、クラブ $j$ に $i$ という人が所属していることを表します。
行列 $A$ を
$$A=(a_{ij})$$
として、$a_{ij}=\begin{cases}1&j\in C_i\\0&j\not\in C_i\end{cases}$
として定義をします。

このとき、$A{}^tA$ は条件から ${\mathbb Z}/2{\mathbb Z}$ において
単位行列になりますので、
$m= \text{rank}(A{}^tA)\le \text{rank}(A)\le n$ となるので、
$m\le n$ が成り立ちます。


Minature 4
は、Miniature 3に引き続き組み合わせ論で類似の話です。
$C_i$ を $n$ 個の元からなる集合の空ではない部分集合とします。
$C_1,C_2,\cdots, C_m$ を互いに異なるそうした部分集合とする。
つまり、これら $\{C_1,C_2,\cdots, C_m\}$ は、最大 $2^n-1$ 個の
ヴァリエーションがあります。
なので、自然に、$m\le 2^n-1$ なる不等式が成り立ちます。

この章での主張は次です。

定理(Generalized Fisher inequality)
もし、$C_i\cap C_i$ $i,j$ によらずすべて同じ数の元からなる集合のとき、
$m$ は、$n$ 以下になる。

次回は、この定理の続きからです。

発表の準備で心がけること

人の前で何かを説明するとき(プレゼンや発表など数学に限らず)、
心がけることは、本説明をしているときに、細部を怠らないことで
説明することです。(あまり本筋と関係のない細部について説明するときや
脱線の話をするときは細部をそれほど話す必要はありません。)
そのとき、口で言うだけでなく、何か形に
残すように(例えばスライドや黒板に書くようにして)で提示します。
例えば、何回も復習する場合は、黒板に残しておいて
なんども引用します。
(こんな簡単なことは説明をしなくてもわかるだろう)ということは
決してありません。

例えば、フィボナッチ数列なら、必ずフィボナッチ数列を特徴付ける式
や関係式、行列表示をするならその行列は書くことが必須ですし、

定理を書くなら、仮定、結論などはかき、
証明をするならレポートで証明を書くくらいの精度でかくこと方が
良いでしょう。

とにかく丁寧に丁寧に説明をしてください。

また、Odd townなら、どのような条件でクラブを作るのかなど
は必ず書くようにします。

また、説明をしている人はよくわからないとおもますが、
一生懸命予習をした人なら、内容についてはよくわかっていますが、
そうでない人には、よくわかっていないということがわかりません。
その点注意しましょう。
つまり、説明は一度言えばわかってもらえるとも限らないので、
(自分はよくわかっていても)説明を繰り返すことが有効です。

少しくどいかなと思われるくらいがちょうど良いです。

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