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2016年10月5日水曜日

微積分II演習(化学類)(第1回)

[場所1E102(水曜日4限)]

今日から微積分II演習(化学類対象)が始まりました.
ガイダンスと、
  • 春学期の復習(マクローリン展開、積分)
  • 開集合、境界点

について演習を行いました。

春学期の復習

春学期で重要なところを本当にざざっとおさらいをしました.

テイラー展開(マクローリン展開)

テイラー展開とは、関数をある点 x=a の近くで、多項式で近似する方法をいうのでした.
a=0 でのテイラー展開をマクローリン展開といいます.

公式は、
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\frac{f'''(a)}{3!}(x-a)^3+\cdots
=\sum_{n=0}^\infty\frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n
となります.ここで、f^{(n)}(a) は、関数 f(x)n 回微分に a を代入したものを表します.

この方法で展開すると、マクローリン展開の公式として、

e^x=\sum_{n=0}^\infty \frac{x^n}{n!}
\sin x=\sum_{n=0}^\infty(-1)^n\frac{x^{2n+1}}{(2n+1)!}
\cos x=\sum_{n=0}^\infty(-1)^n\frac{x^{2n}}{(2n)!}
などが成り立ちます.今回の宿題でも使うのは、
(1+x)^a=\sum_{n=0}^\infty \binom{a}{n}x^n
です.ちなみに、この係数 \binom{a}{n} は2項係数で、
\binom{a}{n}=\frac{a(a-1)\cdots(a-n+1)}{n!}
と定義されます.

今回の例題でもあった a=\frac{1}{2} の場合は、
\binom{\frac{1}{2}}{n}=\frac{\frac{1}{2}(-\frac{1}{2})\cdots(\frac{1}{2}-n+1)}{n!}=(-1)^{n-1}\frac{1\cdot 1\cdot 3\cdot 5\cdots (2n-3)}{2^nn!}=(-1)^{n-1}\frac{(2n-3)!!}{(2n)!!}
この式を用いて、問題1-1(1)のテイラー展開を行ってください.

積分

今日行った積分は、
  • 有理関数
  • 置換積分
  • \sin^nx の積分(部分積分)
でした.

有理関数の積分は、必ず、部分分数展開により、\frac{1}{(x-a)^n} の形か、\frac{1}{1+x^2} の形に直してから、積分しましょう.後者は、
\int_0^a\frac{1}{1+x^2}dx=\text{Arctan}(a)
と計算できます.

置換積分は、\int_a^b f(g(x))g'(x)dx の形の積分で、
\int_a^b f(g(x))g'(x)dx=[F(g(x))]_a^b
と計算されます.ここで、F(x)f(x) の原始関数です.
例題では、f(x)=\frac{1}{1+x} であり、g(x)=\sin x なる関数である場合の計算でした..
置換積分により、
\int_0^1\frac{\cos x}{1+\sin x}dx=[\log(1+\sin x)]_0^1 となり、計算の結果 \log 2 となります.

最後は、 \sin^nx の計算ですが、これはやり方を忘れてしまった人もいたようですが、漸化式を用いる方法が一般的です.一般に、I_n=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^nxdx とすると、
I_n=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^{n-1}x\sin xdx
=[-\sin^{n-1}x\cos x]_0^{\frac{\pi}{2}}+\int_0^{\frac{\pi}{2}}(n-1)\sin^{n-2}x\cos^2xdx
=(n-1)I_{n-2}-(n-1)I_{n}
となり、I_n=\frac{n-1}{n}I_{n-2} となり、この方法で、2つずつ次数を下げていき、
あとは、
I_0=\frac{\pi}{2} もしくは、I_1=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin xdx=[-\cos x]_0^{\frac{\pi}{2}}=1
を使うことで、求めましょう.

授業中注意したように、問題1-1(2-b) をやる際に、28\cdot 26\cdot 24\cdots2 などを計算することになりますが、
(2n)!!=2n(2n-2)(2n-4)\cdots 4\cdot 2
(2n-1)!!=(2n-1)(2n-3)(2n-5)\cdots 3\cdot 1
などの公式を使って2重階乗の記号 !! を用いてください.

開集合、境界点

ここから先は、微積分IIの講義の予習となります.教えたのは、開集合と境界点だけです.

開集合

とりあえずここでは、X{\mathbb R},{\mathbb R}^2 などとしておきます.

X 内のある領域 A に対して、A が開集合であるとは次のようなものをいいます.(ここで、領域とは、Xの (直線上の、または平面上の)あらゆる部分集合をさします.)


定義(開集合)
A が開集合であるとは、任意の {\bf x}\in A に対して、{\bf x} を中心として半径が \epsilon>0 の開区間 \{r\in{\mathbb R}|{\bf x}-\epsilon<r<{\bf x}+\epsilon\} が存在して、その開区間の全ての元が A の中に含まれる.

X={\mathbb R}^2 の場合は、上の定義の開区間はx を中心とした半径 \epsilon>0 の開円盤(境界はない)と書き換えてください.

X が直線の場合は、{\bf x} はある実数を表し、X が平面の場合は、{\bf x} はある点 (x,y) を表します.

開区間の場合は、\{y|x-\epsilon<y<x+\epsilon\}\subset A とでき、
開円盤の場合は、\{(x',y')\in {\mathbb R}^2|(x-x')^2+(y-y')^2<\epsilon^2\}\subset A

とできるということです.
 A=\{r\in {\mathbb R}|0<r<1\} の場合の証明を書いておくと、
(証明)x\in A を任意にとる.このとき、\epsilon\epsilon=\frac{1}{2}\min(|1-x|,|0-x|) とすると、x-\epsilon>0 であり、x+\epsilon<1 が成り立ちます.
ゆえに、\{y\in{\mathbb R}|x-\epsilon<y<x+\epsilon\}\subset A が成り立つので、A が開集合であることがわかる.\Box

ここで、\min をとってさらに \frac{1}{2} をしていますが、これはなくても大丈夫ですし、\frac{1}{3} としても証明は成り立ちます.
また、\min(\alpha,\beta) は、\alpha,\beta のうち、小さい方をとるという関数です.

この区間、円盤は、次元によって区別せず、どちらも教科書では、U_\epsilon({\bf x}) と書いてありますね.これ以降はこの記号を使っていきます.

境界点

定義(境界点)
x\in XA の境界点であるとは、
任意の \epsilon>0 に対して、
U_\epsilon(x)\cap A\neq \emptyset かつ、
U_\epsilon(x)\cap A\neq \emptyset
の両方が成り立つ.

ということです.X が平面の場合は、この区間 U_\epsilon(x) の代わりに (x,y) を中心とした半径が \epsilon の円盤に変わるだけです.


つまり、境界点の定義は、その点の周りにどんな小さい区間、もしくは円盤を取ってきても、A の元もそうでない元も両方現れるということを言っています.

A=\{r\in{\mathbb R}|0<r<1\} の場合に、0,1 が境界点であることを示すには、以下のように書くと良いでしょう.

(証明) x=0 とします.この時、任意の\epsilon>0 をとる.
\epsilon_1=-\frac{1}{2}\epsilon\in U_\epsilon(0)
\epsilon_2=\frac{1}{2}\min(\epsilon,1)\in U_\epsilon(0)
をとる.
このとき、\epsilon_1<0 であり、0<\epsilon_2<1 なので
 \epsilon_1\in A^c かつ、\epsilon_2\in A が成り立つ.
よって、任意の \epsilon に対して、U_\epsilon(x)の元で、A にも入るものも、A に入らないものも見つかるので、0 は境界である.

x=1 とします.この時、任意の\epsilon>0 をとる.
\epsilon_1=1-\frac{1}{2}\epsilon\in U_\epsilon(1)
\epsilon_2=1+\frac{1}{2}\min(\epsilon,1)\in U_\epsilon(1)
をとる.
このとき、\epsilon_1>1 であり、0<\epsilon_2<1 なので
 \epsilon_1\in A^c かつ、\epsilon_2\in A が成り立つ.
よって、任意の \epsilon に対して、U_\epsilon(1)の元で、A にも入るものも、A に入らないものも見つかるので、1 は境界である.\Box

A^cA ではない集合、つまり、A の補集合を表します.

同じことは、2日後の微積分IIの講義の方でもやると思いますので、
そちらを復習ということで聞いておいてください.


問題1-2について

手習い塾でこの問題について質問した人がいました。
この問題を解くには、定義に戻って考えることができるかということです。

B=\{(x,y)|x^2+y^2<1\} が開集合であることを示すには、上の定義に戻ってください。
示せば良いことは、B の任意の元 p=(x,y)\in B を取ってこれば、
その点 p を中心とした半径が r の円盤が取れて、その円盤が B の中に収めることができる、ということです。

示すことは、r をどれほど小さく取れば、B の中に p を中心とした半径 r の円盤を B の中に置くことができるかを示して下さい。

p の場所によって、 r は違ってきます。一般に (x,y) に対して
どのように r を取れば良いでしょうか?
例えば、p=(1/2,0) を取った時にはどうなるでしょうか?
おそらく、r=1/2 くらいで大丈夫でしょう.
p=(0,1/2) の場合はどうでしょうか?
(1/2,1/2) の場合は?色々考えて行けば、一般に、p=(x,y)\in B の場合もわかると思います。

ヒントは、p を中心とした円を B の境界が交わらないように(さらにその円を B の内部に)取れば良いことがわかるはずです.

(x,y) に対してどのように r を取れば良いかが書かれていれば正解とします。


次に境界点ですが、上に書いたように、境界点は、その点を中心としてどんなに小さい(大きい)半径を取っても B の元も B でない元も取ることができることを示してください。

つまり、p を中心とする半径が r の円盤を U_r(p) とすると、U_r(p)\cap B
U_r(p)\cap B^c の空集合ではないことを示せば良いです。
B^c は平面上で B でない点(補集合)を表します。

つまり、どんなr を取っても、そのような点を一つずつ選ぶことができれば良いです。

\{(x,y)|x^2+y^2=1\} の点 p=(x,y) を取ると、U_r(p) には、原点からの距離が1以下の点
も1以上の点も含まれることを示して下しさい。

これは、紙の上に絵を描いてじっくり考えればわかると思います。
どこらへんに取れば良いでしょうか?

わからなければ、メールするか、下のコメント欄に書いても構いません。


手習い塾で質問してきた人に出したもっと簡単な演習問題を出しておきます.
(x,y) 平面上の原点を A とします.つまり、A=\{(0,0)\} です.
このとき、A の内点はどこでしょう?(もしくは、A は開集合でしょうか?)
また、A の境界点はどこでしょうか?

答えだけ下に書きます.証明を考えて下さい.















A の内点は空集合.A は開集合ではない.また、A の境界点は \{0,0)\} となる.
A 外点は、A の補集合の内点のことであり、原点以外の平面の全ての点となる.

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