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2015年6月29日月曜日

ある級数の収束について(オーダーを用いて)

Whittaker & Watson のA course of modern analysis  に載っているある演習問題を
解いてみます。微積分の標準的な教科書です.もちろん英語で書かれています.
初歩から書いてありますが、少々高度なことも書かれています.
昔から読つがれているとてもよい本です.
私が持っているのはCambridge Mathematical Library の第4版です.


問題は
\sum_{n=1}^\infty\left(1-n\log\frac{2n+1}{2n-1}\right)
が収束するか判定せよというものです.

このような級数は見たことが有りませんし、普通の収束の判定法
ダランベールの方法やコーシーの方法などを使ってはあまりできそうにありません.

それらについては去年の授業のブログ(こちら)に書きました.

収束するとすると、この和の記号の中身が 0 に収束する必要がありますが、

\left(\frac{2n+1}{2n-1}\right)^n=\left(1+\frac{2}{2n-1}\right)^n=\left(1+\frac{1}{n-\frac{1}{2}}\right)^n=\left(1+\frac{1}{n-\frac{1}{2}}\right)^{n-\frac{1}{2}}\left(1+\frac{1}{n-\frac{1}{2}}\right)^{\frac{1}{2}}

と変形でき、ネイピア数の性質から、
\left(1+\frac{1}{n-\frac{1}{2}}\right)^{n-\frac{1}{2}}\to e\ \ (n\to \infty)
さらに、
\left(1+\frac{1}{n-\frac{1}{2}}\right)^{\frac{1}{2}}\to 1\ \ (n\to \infty)
となります.

ゆえに、

1-n\log\frac{2n+1}{2n-1}\to 1-\log e=0\ \ (n\to \infty)

となり、必要条件は成り立ちました.

さて、級数の方は収束するでしょうか?級数の各項が 0 に収束しても級数が収束するとは
限りません.

例えば \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n} を考えてください.

この級数は緩やかですが発散します.オーダーとしては O(\log n) くらいです.
もっといえば、 \sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n}\sim \log n\ \ (n\to \infty) です.
つまり定数以外のどんな多項式よりも進みが遅いけど発散はするのです.

オーダー O\sim については コチラ を参照してください.

級数が収束するには各項がどうなっていればよいでしょうか?
今度は十分条件です.

各項が \frac{1}{n} で減っていくと発散しましたから、もっと速く \frac{1}{n^2} で減っていけば
よいでしょうか.


実際、
\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2}=\frac{\pi^2}{6}<\infty
これはかの有名なオイラーが発見したことで有名です.
つまり、級数が O(1/n^2) のオーダーであれば級数は収束するのです.
実際には O(1/n) より少し速く O(1/n^{1+\epsilon}) (ただし \epsilon>0 なる実数) 
であれば級数は収束することが分かります.


なので、1-n\log\frac{2n+1}{2n-1}=O(1/n^2) であることが証明できればよいです.
どうしてそれでよいかは、コチラ を見てください.

ここではテイラー展開を応用しましょう.

最終的に 1/n の項が欲しいので、 1/n のべき級数で展開するとよいでしょう.

\log\frac{2n+1}{2n-1} の部分だけを考えると、

\log\frac{2n+1}{2n-1}=\log\frac{2+\frac{1}{n}}{2-\frac{1}{n}}=\log\frac{1+\frac{1}{2n}}{1-\frac{1}{2n}}
=\log\left(1+\frac{1}{2n}\right)-\log\left(1-\frac{1}{2n}\right)
ここで、\log のべき級数展開(テイラー展開)は
\log(1+x)=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}-\frac{x^4}{4}+\cdots
\log(1-x)=-\left(x+\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}+\frac{x^4}{4}+\cdots\right)
ですから、これを使って、
\log\left(1+\frac{1}{2n}\right)=\frac{1}{2n}-\frac{1}{2}\left(\frac{1}{2n}\right)^2+\frac{1}{3}\left(\frac{1}{2n}\right)^3-\cdots
\log\left(1-\frac{1}{2n}\right)=-\left(\frac{1}{2n}+\frac{1}{2}\left(\frac{1}{2n}\right)^2+\frac{1}{3}\left(\frac{1}{2n}\right)^3+\cdots\right)
この差をとると、
\log\left(1+\frac{1}{2n}\right)-\log\left(1-\frac{1}{2n}\right)=2\left(\frac{1}{2n}\right)+\frac{2}{3}\left(\frac{1}{2n}\right)^3+\frac{2}{5}\left(\frac{1}{2n}\right)^5+\cdots
よって、
1-n\log\frac{2n+1}{2n-1}=1-n\left(2\left(\frac{1}{2n}\right)+\frac{2}{3}\left(\frac{1}{2n}\right)^3+\frac{2}{5}\left(\frac{1}{2n}\right)^5+\cdots\right)
=-2n\left(\frac{1}{3}\left(\frac{1}{2n}\right)^3+\frac{1}{5}\left(\frac{1}{2n}\right)^5+\cdots\right)
=-\left(\frac{1}{3}\left(\frac{1}{2n}\right)^2+\frac{1}{5}\left(\frac{1}{2n}\right)^4+\cdots\right)=\frac{1}{n^2}\left(-\frac{1}{3\cdot2^2}-\frac{1}{5\cdot 2^4}\frac{1}{n^2}-\cdots\right)

よって、これらはテイラー展開から来ていますので、

n^2\left(1-n\log\frac{2n+1}{2n-1}\right)=-\frac{1}{12}-O(1/n^2)\ \ (n\to \infty)
となります.
よって、
1-n\log\frac{2n+1}{2n-1}=O(1/n^2)\ \ (n\to \infty)
が言えました.
さらに、
1-n\log\frac{2n+1}{2n-1}\sim -\frac{1}{12n^2}
だということもわかりました.

つまり収束級数(上のオイラーの例だった)のオーダーをもつ数列だったので、
元の級数は収束します.

この最後の部分で、オーダーの級数が収束するなら元の級数の収束するというところは
別の記事(コチラ)に書きました.

もしくは、
|\sum_{n=1}^\infty\left(1-n\log\frac{2n+1}{2n-1}\right)|<C\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^2}<\infty

のような不等式を考えればよいでしょう.

  1. Whittaker & Watson, A course of modern analysis, Cambridge Mathematical Library

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