自然数$m$ の分割 $\lambda=(\lambda_1,\cdots,\lambda_n)\in {\Bbb Z}^n$ とは広義減少列 $\lambda_1\ge \lambda_2\ge \cdots\ge \lambda_n$ で
$m=\lambda_1+\cdots+\lambda_n$ を満たすものとする.
さらに、$\delta=(n-1,n-2,\cdots,0)$ とし、$\lambda+\delta$ とすると、狭義減少列
$\lambda_1+n-1> \lambda_2+n-2> \cdots> \lambda_n$
が得られます.
さて、$\eta$を分割としたとき、
$a_{\eta}=\det
\begin{pmatrix}
x_1^{\eta_1}&x_1^{\eta_2}&\cdots&x_1^{\eta_{n-1}}&x_1^{\eta_n}\\
x_2^{\eta_1}&x_2^{\eta_2}&\cdots&x_2^{\eta_{n-1}}&x_2^{\eta_n}\\
\cdots&\cdots&\cdots&\cdots\cdots\\
x_n^{\eta_1}&x_n^{\eta_2}&\cdots&x_n^{\eta_{n-1}}&x_m^{\eta_n}
\end{pmatrix}
$
と定義します.
そうすると$a_\eta$ は$\eta$ が0 出ないためには $\eta$ は
狭義減少列である必要があります。
$a_\delta$ は よくある差積 $\Delta=\prod_{i<j}(x_i-x_j)$ となります.
シューア多項式とは、
ある分割 $\lambda=(\lambda_1,\lambda_2,\cdots,\lambda_n)$ に対して、
$s_\lambda=\frac{a_{\lambda+\delta}}{a_{\delta}}$
と定義されます.
シューア多項式は対称式です.
対称群の元 $\sigma\in S_n$ に対して、変数を $x_1,x_2,..,x_n$ とする多項式 $f(x_1,\cdots,x_n)$ に
$$\sigma\cdot f(x_1,\cdots,x_n)=f(x_{\sigma(1)},\cdots,x_{\sigma(n)})$$
とする変換を多項式全体 ${\Bbb C}[x_1,\cdots,x_n]=:{\Bbb C}[x]$ に定義すると、
対称群 $S_n$ は ${\Bbb C}[x]$ 上に作用させることができます.
その固定部分集合
$${\Bbb C}[x]^{S_n}=\{f\in{\Bbb C}[x]|\sigma\cdot f=f,\forall f\in{\Bbb C}[x]\}$$
のことを対称式といいます.
そのとき、${\Bbb C}[x]^{S_n}$ は基本対称式 $\{\sigma_1,\sigma_2,\cdots,\sigma_n\}$
の多項式として書けることが知られています.
つまり、${\Bbb C}[x]^{S_n}={\Bbb C}[\sigma_1,\sigma_2,\cdots,\sigma_n]={\Bbb C}[s]$
基本対称式とは、つまり、
$\sigma_1=x_1+\cdots+x_n$
$\sigma_2=\sum_{i<j}x_ix_j$
$ \cdots$
$ \sigma_n=\prod_{i=1}^nx_i$
となるもので、それぞれ、$\sigma_i$ は $i$ 次の斉次式となっています.
ところで、${\Bbb C}[x]^{S_n}$ の $m$ 次斉次式全体を $V_{n,m}$としましょう.
$m$ の$n$ 個以下の整数の分割に対して
そのシューア多項式 $s_\lambda$ は$V_{n,m}$ の元です.
一般に、
[定理]
$V_{n,m}$ の元は $n$個以下の$m$ の分割に付随したシューア多項式の
一次結合で書けます.シューア多項式が一次独立であることから、
特に、$\dim(V_{n,m})$は $n$ 個以下の$m$の分割の個数と一致します.
つまり、シューア多項式は$V_{n,m}$を ${\Bbb C}$-ベクトル空間
としたときの基底となっているのです.
例えば、$n=2$ として、$2$ 個以下の $m=5$ の分割は、$5, 4+1,3+2$ の
3種類あります。よって、$\dim(V_{5,2})=3$.
$s_{(5)}=x_1^5 + x_1^4 x_2 + x_1^3x_2^2 + x_1^2x_2^3 + x_1x_2^4 + x_2^5$
$s_{(4,1)}=x_1^4x_2+x_1^3x_2^2+x_1^2x_2^3+x_1x_2^4$
$s_{(3,2)}=x_1^3x_2^2+x_1^2x_2^3$
このような計算はシューア多項式のwiki(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%A2%E5%A4%9A%E9%A0%85%E5%BC%8F)
にも書いてあります.
上の定理の証明ですが、まず
交代式全体の中で、$\{a_{\lambda+\delta}\}$が一次独立であることと、
対称式全体の中で $\{s_{\lambda}\}$が一次独立であることは同値である.
交代式は必ず、(差積)$\times$ (対称式)
の形をしている.ということから導かれる.
もちろん多項式環の中では、$f\cdot g=0$ ならば $f=0$ もしくは $g=0$ も成り立っている.
交代式 $\{a_{\lambda+\delta}\}$ が一次独立であることは、
異なる $\lambda+\delta$ と $\lambda'+\delta$ に対して、$a_{\lambda+\delta}$ と $a_{\lambda'+\delta}$ には
共通項がないので当然$\{a_{\lambda+\delta}\}$ は一次独立.
ゆえに、対称式の中で $\{s_\lambda\}$ も一次独立.
任意の交代式 $A$ が $a_{\lambda+\delta}$ の一次結合でかけることは、
そのような交代式の任意の項は、$\alpha x_1^{l_1}x_2^{l_2}\cdots x_n^{l_n}$
と書くことができて、任意の$\tau\in S_n$ に対して、
$\text{sig}(\tau)\alpha x_1^{l_{\tau^{-1}(1)}}x_2^{l_{\tau^{-1}(2)}}\cdots x_n^{l_{\tau^{-1}(n)}} $
もこの交代式に入っている.
ここで、$\text{sig}$ は置換の符号.
つまり $A$ は、指数を大きさ順に並べたものを $\lambda+\delta$ とおけば、
それらの項は、$\pm \alpha a_{\lambda+\delta}$ とかける.
これらの項を $A$ からまるまる引くことで、新しい交代式 $A'$ が得られる.
これを有限回繰り返すことで、
$A=\alpha_1a_{\lambda_1+\delta}+\alpha_2a_{\lambda_2+\delta}+\cdots+\alpha_na_{\lambda_n+\delta}$
が得られる.
よって、$2$ 変数の中で、5次の斉次式は、
$\sigma_1^5, \sigma_1^3\sigma_2, \sigma_1\sigma_2^2$
の式で書けるが、これらは一次独立であり、 $s_{(5)}, s_{(4,1)}, s_{(3,2)}$ の
一次結合でかくことができる.
$\sigma_1^5=s_{(5)}+4s_{(4,1)}+5s_{(3,2)}$
$\sigma_1^3\sigma_2=s_{(4,1)}+2s_{(3,2)}$
$\sigma_1\sigma_2^2=s_{(3,2)}$
となります.
[参考文献]
岩堀長慶 対称群と一般線型群の表現論--既約指標・Young図形とテンソル空間の分解 (岩波書店)
$m=\lambda_1+\cdots+\lambda_n$ を満たすものとする.
さらに、$\delta=(n-1,n-2,\cdots,0)$ とし、$\lambda+\delta$ とすると、狭義減少列
$\lambda_1+n-1> \lambda_2+n-2> \cdots> \lambda_n$
が得られます.
さて、$\eta$を分割としたとき、
$a_{\eta}=\det
\begin{pmatrix}
x_1^{\eta_1}&x_1^{\eta_2}&\cdots&x_1^{\eta_{n-1}}&x_1^{\eta_n}\\
x_2^{\eta_1}&x_2^{\eta_2}&\cdots&x_2^{\eta_{n-1}}&x_2^{\eta_n}\\
\cdots&\cdots&\cdots&\cdots\cdots\\
x_n^{\eta_1}&x_n^{\eta_2}&\cdots&x_n^{\eta_{n-1}}&x_m^{\eta_n}
\end{pmatrix}
$
と定義します.
そうすると$a_\eta$ は$\eta$ が0 出ないためには $\eta$ は
狭義減少列である必要があります。
$a_\delta$ は よくある差積 $\Delta=\prod_{i<j}(x_i-x_j)$ となります.
シューア多項式とは、
ある分割 $\lambda=(\lambda_1,\lambda_2,\cdots,\lambda_n)$ に対して、
$s_\lambda=\frac{a_{\lambda+\delta}}{a_{\delta}}$
と定義されます.
シューア多項式は対称式です.
対称群の元 $\sigma\in S_n$ に対して、変数を $x_1,x_2,..,x_n$ とする多項式 $f(x_1,\cdots,x_n)$ に
$$\sigma\cdot f(x_1,\cdots,x_n)=f(x_{\sigma(1)},\cdots,x_{\sigma(n)})$$
とする変換を多項式全体 ${\Bbb C}[x_1,\cdots,x_n]=:{\Bbb C}[x]$ に定義すると、
対称群 $S_n$ は ${\Bbb C}[x]$ 上に作用させることができます.
その固定部分集合
$${\Bbb C}[x]^{S_n}=\{f\in{\Bbb C}[x]|\sigma\cdot f=f,\forall f\in{\Bbb C}[x]\}$$
のことを対称式といいます.
そのとき、${\Bbb C}[x]^{S_n}$ は基本対称式 $\{\sigma_1,\sigma_2,\cdots,\sigma_n\}$
の多項式として書けることが知られています.
つまり、${\Bbb C}[x]^{S_n}={\Bbb C}[\sigma_1,\sigma_2,\cdots,\sigma_n]={\Bbb C}[s]$
基本対称式とは、つまり、
$\sigma_1=x_1+\cdots+x_n$
$\sigma_2=\sum_{i<j}x_ix_j$
$ \cdots$
$ \sigma_n=\prod_{i=1}^nx_i$
となるもので、それぞれ、$\sigma_i$ は $i$ 次の斉次式となっています.
ところで、${\Bbb C}[x]^{S_n}$ の $m$ 次斉次式全体を $V_{n,m}$としましょう.
$m$ の$n$ 個以下の整数の分割に対して
そのシューア多項式 $s_\lambda$ は$V_{n,m}$ の元です.
一般に、
[定理]
$V_{n,m}$ の元は $n$個以下の$m$ の分割に付随したシューア多項式の
一次結合で書けます.シューア多項式が一次独立であることから、
特に、$\dim(V_{n,m})$は $n$ 個以下の$m$の分割の個数と一致します.
つまり、シューア多項式は$V_{n,m}$を ${\Bbb C}$-ベクトル空間
としたときの基底となっているのです.
例えば、$n=2$ として、$2$ 個以下の $m=5$ の分割は、$5, 4+1,3+2$ の
3種類あります。よって、$\dim(V_{5,2})=3$.
$s_{(5)}=x_1^5 + x_1^4 x_2 + x_1^3x_2^2 + x_1^2x_2^3 + x_1x_2^4 + x_2^5$
$s_{(4,1)}=x_1^4x_2+x_1^3x_2^2+x_1^2x_2^3+x_1x_2^4$
$s_{(3,2)}=x_1^3x_2^2+x_1^2x_2^3$
このような計算はシューア多項式のwiki(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%A2%E5%A4%9A%E9%A0%85%E5%BC%8F)
にも書いてあります.
上の定理の証明ですが、まず
交代式全体の中で、$\{a_{\lambda+\delta}\}$が一次独立であることと、
対称式全体の中で $\{s_{\lambda}\}$が一次独立であることは同値である.
交代式は必ず、(差積)$\times$ (対称式)
の形をしている.ということから導かれる.
もちろん多項式環の中では、$f\cdot g=0$ ならば $f=0$ もしくは $g=0$ も成り立っている.
交代式 $\{a_{\lambda+\delta}\}$ が一次独立であることは、
異なる $\lambda+\delta$ と $\lambda'+\delta$ に対して、$a_{\lambda+\delta}$ と $a_{\lambda'+\delta}$ には
共通項がないので当然$\{a_{\lambda+\delta}\}$ は一次独立.
ゆえに、対称式の中で $\{s_\lambda\}$ も一次独立.
任意の交代式 $A$ が $a_{\lambda+\delta}$ の一次結合でかけることは、
そのような交代式の任意の項は、$\alpha x_1^{l_1}x_2^{l_2}\cdots x_n^{l_n}$
と書くことができて、任意の$\tau\in S_n$ に対して、
$\text{sig}(\tau)\alpha x_1^{l_{\tau^{-1}(1)}}x_2^{l_{\tau^{-1}(2)}}\cdots x_n^{l_{\tau^{-1}(n)}} $
もこの交代式に入っている.
ここで、$\text{sig}$ は置換の符号.
つまり $A$ は、指数を大きさ順に並べたものを $\lambda+\delta$ とおけば、
それらの項は、$\pm \alpha a_{\lambda+\delta}$ とかける.
これらの項を $A$ からまるまる引くことで、新しい交代式 $A'$ が得られる.
これを有限回繰り返すことで、
$A=\alpha_1a_{\lambda_1+\delta}+\alpha_2a_{\lambda_2+\delta}+\cdots+\alpha_na_{\lambda_n+\delta}$
が得られる.
よって、$2$ 変数の中で、5次の斉次式は、
$\sigma_1^5, \sigma_1^3\sigma_2, \sigma_1\sigma_2^2$
の式で書けるが、これらは一次独立であり、 $s_{(5)}, s_{(4,1)}, s_{(3,2)}$ の
一次結合でかくことができる.
$\sigma_1^5=s_{(5)}+4s_{(4,1)}+5s_{(3,2)}$
$\sigma_1^3\sigma_2=s_{(4,1)}+2s_{(3,2)}$
$\sigma_1\sigma_2^2=s_{(3,2)}$
となります.
[参考文献]
岩堀長慶 対称群と一般線型群の表現論--既約指標・Young図形とテンソル空間の分解 (岩波書店)
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