位相空間と距離空間
3年生で習う一般の位相空間がわからなくてつまづく人が多いようです.
そのためには2年生で習う距離空間の内容が理解できているかどうかがカギとなります.
キチンと理解していれば一般の位相空間でも理解はできると思います。
なので、もし位相空間がわからなくなったときはもう一度、距離空間の復習から始めてください.
内田伏一の教科書「集合と位相」でいえば、4章の内容です.
主なトピックは
- ユークリッド空間の性質
- ユークリッド空間の開集合、閉集合
- 一般の距離空間、距離の性質と距離の定義
- 距離空間の開集合、閉集合
- 距離空間の開集合の満たす性質
- ε-近傍
- 連続写像の定義
- 集積点
学習の流れとしては、ユークリッド空間 → 距離空間 → 位相空間
で、この順に一般化されています.
開集合、閉集合、連続写像
距離空間や位相空間の理解において、重要なのは、
- 開集合
- 閉集合
- 連続写像
距離空間の場合にはその定義は重要になります.
まず、$B_\epsilon(p)=\{x\in X|\ d(p,x)<\epsilon\}$ を
$\epsilon$-近傍といいます.つまり、$p$ から距離 $\epsilon$ 以内
にある点全体です.
1.開集合の定義(性質)は、
「開集合 $U$ の任意の点 $p$ は、$p$ を含むある $\epsilon$-近傍 $B_\epsilon(p)$ が、 $U$ の中に入れることができる」
です.つまり、
$$p\in B_\epsilon(p)\subset U$$
となる開集合 $A$ がとれるということです.
2.閉集合の定義(性質)は、
「閉集合は開集合の補集合である」
です.
3.連続の定義は、
これは、実数上の連続関数のときのあの $\epsilon-\delta$ 論法と全く同じものです.
「距離空間 $U,V$ の間の写像
$$f:U \to V$$
が $p\in U$ で連続であるとは、
任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $\delta>0$ が存在して、
$B_\delta(p)\subset f^{-1}(B_\epsilon(f(p)))$
$B_\delta(p)\subset f^{-1}(B_\epsilon(f(p)))$
となる。」
です.
イプシロンデルタ論法は微積の時間に、論理の勉強と共に大変苦労したと思います。
$a\in {\mathbb R}$ で関数 $f(x)$ が連続とは、
「任意の $\epsilon>0$ に対して $\delta>0$ が存在して、
$$|x-a|<\delta ならば |f(x)-f(a)|<\epsilon$$
を満たす.」
でした.
距離空間における $\epsilon$-近傍は、位相空間では、単に開集合として一般化されます.
つまり、位相空間においては、上の性質は
$U$ が開集合のとき、、
「$U$ の任意の点 $p$ に対して、
$$p\in A\subset U$$
となる開集合 $A$ が存在する」
となりますし、連続写像は、
「$f(p)$ の任意の開集合 $U$ の逆像に $p\subset A\subset f^{-1}(U)$ となる開集合 $A$ が存在する.」
実はこれは、任意の開集合 $U$ の逆像 $f^{-1}(U)$ が再び開集合であるといっても同じです.
近傍について
また、位相空間や距離空間において、任意の点 $x$ の近傍 $B$
とは、$B$ の中に、$x$ を含む開集合(開近傍)が存在することです.
なので、距離空間において $B$ を $\{x|d(x,p)\le \epsilon\}$ とするとこれは近傍になります.
また、$x$ を含む任意の開集合は全て$x$ の近傍になりえます。
位相空間の開集合はどうやってさだめるのか?
距離空間においては、開集合を決めるのは簡単です.まずは $\epsilon$-近傍を定めておいて、その近傍が入るように開集合を作っていけばよいですが、開集合が完成しますが、距離がない状態において開集合をどうやって定めるのか?
距離空間のように開集合を定める方法がないので、こちらから、「これが開集合だぞ」と定めてあげる必要があります.
そのとき、開集合となるための条件が、位相空間の開集合の3つの条件
となるのです.
- 空集合は開集合と定める.
- 有限個の開集合の共通集合は開集合となる.
- 任意個の開集合の和集合は開集合となる.
となるのです.
位相空間や距離空間を理解するためのもっとも基本的な要素は、
・開集合、
・閉集合、
・連続
です.これらの定義からそのイメージを正確にもつことが大事です.
問題を解くときには、上で書いたような性質や定義に戻れるようにしておきましょう.
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