2014年6月25日水曜日

ゾルゲンフライ直線、平面

位相空間を考える意味は距離空間ではないような連続な空間を
考えることです.

もっといえば、距離がどうしても入らないような空間にも連続性を考えたい
ということがあると思います.

ですが、考える空間はどうしても距離空間になってしまいます.

距離が入らない空間を考える意味ってあるんでしょうか?
ここではそのような空間を考えることはとても豊かなことであることを
説明します.

距離空間であるとするとどんなことが起こるかというと、ざっというと
下のようです.
  1. 第1可算公理を満たす.
  2. 可分であることと第2可算であることとリンデレーフであることは同値
  3. $f:(X_1,{\mathcal O}_1)\to (X_2,{\mathcal O}_2)$ で$X_1$ が距離空間なら $f$ が点列連続であることと連続が同値.
  4. 距離空間の任意の積空間も距離空間
  5. 距離空間の任意の部分空間も距離空間
  6. ハウスドルフ
  7. 分離公理 $T_3,T_4$ を満たす.
  8. 完全正規および全部分正規
  9. コンパクト、可算コンパクト、点列コンパクト、極限点コンパクトが全て同値.
リンデレーフとは任意の開被覆が可算部分被覆をもつ.
完全正規とは、全ての閉部分集合 $F$ に対してある連続関数 $f$ があって、
$F=f^{-1}(0)$ となること
全部分正規とは全ての部分集合が正規となることである.
一般に、
完全正規 $\Rightarrow$ 全部分正規 $\Rightarrow$ 正規

可算コンパクトとは可算開被覆は有限部分被覆をもつ.
点列コンパクトとは任意の点列は収束部分点列をもつ.
極限点コンパクトとは任意の無限点列には極限点が存在する.
集合 $A$ の極限点 $p$ とは $p$ を含む任意の開集合に $A$ の元が含まれること.

なので、距離空間以外のものを考えようとすると、上のどれかの条件を壊せばよいわけです.
また、

ウリゾーンの距離化定理
第2可算かつ正規ハウスドルフならば距離化可能

がありますから、まずそれを外すことを考えるのが筋かもしれません.
もちろん第2可算を満たさない距離空間もあるわけですが.

そういうわけで、手っ取り早く非距離空間(距離化できない空間)を考えますと、
教科書で大体でてくるのを言えば、ゾルゲンフライ直線というのがあります.
(ココ) でも少し取り上げました.

ゾルゲンフライ直線 ${\Bbb R}_S$ とは、
半開区間 $[a,b)$ を開基にもつ実数 ${\Bbb R}$ 上の位相です.
下限位相をもつ実数と言ってもよいです.

これは上のどれを壊しているかというと、2番目の可分と第2可算が同値
という所です.

可分であることは ${\Bbb R}$ の中に ${\Bbb Q}$ 稠密可算集合が
存在することから明らかです.
もちろん証明がいらないほど明らかではありません.

第2可算でないことはすぐ分かります.(ただし選択公理は使います.)
実数 $a\in {\Bbb R}$ を任意の取った時に、区間 $[a,a+1)$ の元 $a$
に対して$a$ を含み $[a,a+1)$ の内部に含まれる開基 $\beta$ の元が存在します.
それを $B_a$ とおけば、 $a\neq a'$ であれば $B_a\neq B_{a'}$ ですね.
それぞれの$\inf$ を取ってください.
つまり、$\beta$ には必ず非可算無限個は開集合が要ることになります.

これは第2可算でないことを意味しています.

そういうわけで、${\Bbb R}_S$ には距離空間にはならないことが分かります.

普通の ${\Bbb R}$ 上の距離空間の位相よりも大きい位相(開集合の種類が多い)
であることもすぐ分かりますが、開集合が多すぎて距離空間をはみ出した訳です.

普通の感覚では、開集合が少なくなればなるほど距離空間ではいられなくなりそうです.
例えば、${\Bbb R}$ 上の密着位相は勿論距離空間ではありません.(非ハウスドルフ)

距離空間でいる為にはほどよく開集合が存在することが重要なのでしょうか?

他にも注目すべき性質として、

  •  ${\Bbb R}_S$ は完全不連結.つまり、繋がっているように見える ${\Bbb R}_S$ の各々の点の連結成分は各点のみです.実数に下限位相を入れただけでみんなバラバラの成分になってしまいます.
  • 一点は閉集合ですが、一点が開集合となる離散位相よりは弱い位相です.
  • 任意のコンパクト部分集合は可算集合かつ(ユークリッド空間上)疎集合(nowhere dense)
  • ${\Bbb R}_S$ はリンデレーフ.
  • $\sigma$-コンパクトではない
$\sigma$-コンパクトとは可算個のコンパクト集合の和集合としてかけること.

ところで、このゾルゲンフライ直線 ${\Bbb R}_S$ まだ他にも面白い性質を持っています.

まず、${\Bbb R}_S$ はハウスドルフであることはすぐわかると思いますが、
実は正規空間でもあります.正規空間の定義は以下のようです.

正規空間
位相空間 $X$ がハウスドルフであり、任意の2つの閉集合 $F,G$ に対して
開集合 $U,V$ が存在して、
$F\subset U,G\subset V$ かつ $U\cap V= \emptyset$ を満たす.

しかし、2つ直積をとったゾルゲンフライ平面 ${\Bbb R}_S^2={\Bbb R}_S\times {\Bbb R}_S$
は正規ではないのです.
つまり一般に2つの正規空間の直積は再び正規空間にはなりません.
${\Bbb R}_S^2$ の開基は $[a,b)\times [c,d)$ となる集合です.

ちなみに、2つのハウスドルフの積はハウスドルフだし、2つの正則空間の積は正則、
また2つのチコノフ空間の積もチコノフ空間です.
正規になるとこの条件が崩れるのです.
その例を与えているのが ${\Bbb R}_S^2$ でもあるのです.

${\Bbb R}_S$ は完全正規であることが分かっているので、完全正規を2つ積を取っても
正規ではいられないのです.

また、上に全部分正規という概念があることからわかるように、
正規空間でも部分空間をとるといつでも正規とは限りません.

また、${\Bbb R}_S^2$ は同じように可分な空間であるが、
その部分集合 $\Delta=\{(x,-x)\in {\Bbb R}_S|x\in {\Bbb R}_S\}$ は離散位相が入っていますので
非可分空間です.
つまり、部分空間として非可分空間を含む可分空間ということになります.

積をとっても正規が保たれないということは、ゾルゲンフライの1947年の仕事です。
下の参考文献の (1) は $S$ がパラコンパクトなら $S\times S$もそうかというデュドネの
問題に対する答え(否定的解答)です.

パラコンパクトとは任意の開被覆に対して局所有限な開細分となる被覆をもつことです.

開細分被覆
${\mathcal V}$ が開被覆 ${\mathcal U}$ の開細分であるとは、任意の$U\in {\mathcal U}$
に対してある $V\in {\mathcal V}$ が存在して、$V\subset U$ となること.
局所有限な被覆 ${\mathcal U}$ とは、任意の点 $p$ に対して、$\{U\in {\mathcal U}|p\in U\}$
が有限集合であること.

分かっていることはパラコンパクトなハウスドルフ空間は正規です.
よって、パラコンパクトな ${\Bbb R}_S$ の2つの直積 ${\Bbb R}_S^2$ は
正規ではないのでもちろんパラコンパクトではありません.

よって、正規、パラコンパクトは積をとる操作では保たれない.

が分かります.

このように、距離空間と全く違う性質をもつ空間に出会えるのも距離を入れない
連続な空間(位相空間)を考えたおかげと言えると思います.

位相空間の概念の論理関係を一つ一つ考えていくと、必ずそれを満たさない
狭間の空間が存在します.
つまり、一般位相空間やその概念を考えることは大変貴重で意味深いことなのです.
参考文献の(2) が大変便利です.

距離空間を太陽系とすれば、太陽系を脱して少し軌道を外れていくと
たちまちおかしな空間に出会います.
位相空間の満たすべき定義はたった3つですがその中に
果てしない宇宙への旅が含まれているかと思うと位相空間の定義に
改めて感激せざるをえません

[参考文献]
  1. R.H. Sorgenfly, On the topological product of paracompact spaces, Bull. Amer. Math. Soc. 53, (1947). 631–632.
  2. Lynn Arthur Steen and J. Arthur Seebach, Jr. Counterexamples in topology, Reprint of the second (1978) edition.Dover Publications, Inc., Mineola, NY, 1995. xii+244 pp

2014年6月16日月曜日

対称式の生成元としてのシューア多項式

自然数$m$ の分割 $\lambda=(\lambda_1,\cdots,\lambda_n)\in {\Bbb Z}^n$ とは広義減少列 $\lambda_1\ge \lambda_2\ge \cdots\ge \lambda_n$ で
$m=\lambda_1+\cdots+\lambda_n$ を満たすものとする.

さらに、$\delta=(n-1,n-2,\cdots,0)$ とし、$\lambda+\delta$ とすると、狭義減少列
$\lambda_1+n-1> \lambda_2+n-2> \cdots> \lambda_n$
が得られます.

さて、$\eta$を分割としたとき、
$a_{\eta}=\det
\begin{pmatrix}
x_1^{\eta_1}&x_1^{\eta_2}&\cdots&x_1^{\eta_{n-1}}&x_1^{\eta_n}\\
x_2^{\eta_1}&x_2^{\eta_2}&\cdots&x_2^{\eta_{n-1}}&x_2^{\eta_n}\\
\cdots&\cdots&\cdots&\cdots\cdots\\
x_n^{\eta_1}&x_n^{\eta_2}&\cdots&x_n^{\eta_{n-1}}&x_m^{\eta_n}
\end{pmatrix}
$
と定義します.
そうすると$a_\eta$ は$\eta$ が0 出ないためには $\eta$ は
狭義減少列である必要があります。
$a_\delta$ は よくある差積 $\Delta=\prod_{i<j}(x_i-x_j)$ となります.

 シューア多項式とは、
ある分割 $\lambda=(\lambda_1,\lambda_2,\cdots,\lambda_n)$ に対して、

$s_\lambda=\frac{a_{\lambda+\delta}}{a_{\delta}}$

と定義されます.

シューア多項式は対称式です.

対称群の元 $\sigma\in S_n$ に対して、変数を $x_1,x_2,..,x_n$ とする多項式 $f(x_1,\cdots,x_n)$ に
$$\sigma\cdot f(x_1,\cdots,x_n)=f(x_{\sigma(1)},\cdots,x_{\sigma(n)})$$
とする変換を多項式全体 ${\Bbb C}[x_1,\cdots,x_n]=:{\Bbb C}[x]$ に定義すると、
対称群 $S_n$ は ${\Bbb C}[x]$ 上に作用させることができます.
その固定部分集合
$${\Bbb C}[x]^{S_n}=\{f\in{\Bbb C}[x]|\sigma\cdot f=f,\forall f\in{\Bbb C}[x]\}$$
のことを対称式といいます.

そのとき、${\Bbb C}[x]^{S_n}$ は基本対称式 $\{\sigma_1,\sigma_2,\cdots,\sigma_n\}$
の多項式として書けることが知られています.
つまり、${\Bbb C}[x]^{S_n}={\Bbb C}[\sigma_1,\sigma_2,\cdots,\sigma_n]={\Bbb C}[s]$
基本対称式とは、つまり、

$\sigma_1=x_1+\cdots+x_n$
$\sigma_2=\sum_{i<j}x_ix_j$
$ \cdots$
$ \sigma_n=\prod_{i=1}^nx_i$

となるもので、それぞれ、$\sigma_i$ は $i$ 次の斉次式となっています.

ところで、${\Bbb C}[x]^{S_n}$ の $m$ 次斉次式全体を $V_{n,m}$としましょう.
$m$ の$n$ 個以下の整数の分割に対して
そのシューア多項式 $s_\lambda$ は$V_{n,m}$ の元です.
一般に、

[定理]
$V_{n,m}$ の元は $n$個以下の$m$ の分割に付随したシューア多項式の
一次結合で書けます.シューア多項式が一次独立であることから、
特に、$\dim(V_{n,m})$は $n$ 個以下の$m$の分割の個数と一致します.

つまり、シューア多項式は$V_{n,m}$を ${\Bbb C}$-ベクトル空間
としたときの基底となっているのです.

例えば、$n=2$ として、$2$ 個以下の $m=5$ の分割は、$5, 4+1,3+2$ の
3種類あります。よって、$\dim(V_{5,2})=3$.

$s_{(5)}=x_1^5 + x_1^4 x_2 + x_1^3x_2^2 + x_1^2x_2^3 + x_1x_2^4 + x_2^5$
$s_{(4,1)}=x_1^4x_2+x_1^3x_2^2+x_1^2x_2^3+x_1x_2^4$
$s_{(3,2)}=x_1^3x_2^2+x_1^2x_2^3$

このような計算はシューア多項式のwiki(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%A2%E5%A4%9A%E9%A0%85%E5%BC%8F)
にも書いてあります.

上の定理の証明ですが、まず
交代式全体の中で、$\{a_{\lambda+\delta}\}$が一次独立であることと、
対称式全体の中で $\{s_{\lambda}\}$が一次独立であることは同値である.
交代式は必ず、(差積)$\times$ (対称式)
の形をしている.ということから導かれる.
もちろん多項式環の中では、$f\cdot g=0$ ならば $f=0$ もしくは $g=0$ も成り立っている.

交代式 $\{a_{\lambda+\delta}\}$ が一次独立であることは、
異なる $\lambda+\delta$ と $\lambda'+\delta$ に対して、$a_{\lambda+\delta}$ と $a_{\lambda'+\delta}$ には
共通項がないので当然$\{a_{\lambda+\delta}\}$ は一次独立.
ゆえに、対称式の中で $\{s_\lambda\}$ も一次独立.

任意の交代式 $A$  が $a_{\lambda+\delta}$ の一次結合でかけることは、
そのような交代式の任意の項は、$\alpha x_1^{l_1}x_2^{l_2}\cdots x_n^{l_n}$
と書くことができて、任意の$\tau\in S_n$ に対して、
$\text{sig}(\tau)\alpha x_1^{l_{\tau^{-1}(1)}}x_2^{l_{\tau^{-1}(2)}}\cdots x_n^{l_{\tau^{-1}(n)}} $
もこの交代式に入っている.
ここで、$\text{sig}$ は置換の符号.
つまり $A$ は、指数を大きさ順に並べたものを $\lambda+\delta$ とおけば、
それらの項は、$\pm \alpha a_{\lambda+\delta}$ とかける.
これらの項を $A$ からまるまる引くことで、新しい交代式 $A'$ が得られる.
これを有限回繰り返すことで、
$A=\alpha_1a_{\lambda_1+\delta}+\alpha_2a_{\lambda_2+\delta}+\cdots+\alpha_na_{\lambda_n+\delta}$
が得られる.

よって、$2$ 変数の中で、5次の斉次式は、
$\sigma_1^5,  \sigma_1^3\sigma_2,  \sigma_1\sigma_2^2$
の式で書けるが、これらは一次独立であり、 $s_{(5)}, s_{(4,1)}, s_{(3,2)}$ の
一次結合でかくことができる.

$\sigma_1^5=s_{(5)}+4s_{(4,1)}+5s_{(3,2)}$
$\sigma_1^3\sigma_2=s_{(4,1)}+2s_{(3,2)}$
$\sigma_1\sigma_2^2=s_{(3,2)}$

となります.

[参考文献]
岩堀長慶 対称群と一般線型群の表現論--既約指標・Young図形とテンソル空間の分解  (岩波書店)

2014年6月6日金曜日

セミナーについて

この前、手習い塾で学部生とセミナーについて話していたんですが、

どこか誤解していることもあるかと思いましたので
大学で行われているセミナーや集中講義、その派生型など少しまとめてみました。

まずは、

[一般のセミナー]
セミナー一般について書きます。

数学を勉強し始めるとき、どんなきっかけかわかりませんが、
少なくとも数学の授業や本や雑誌などから入ると思います。
授業を聞いて理解したり、本を読み進めながら数学を理解して行きます。
大抵この場合一人で行います。

大学では同じ専攻の人達が集まっています。
同じ専攻の人達と数学を効率良く学習する方法が
セミナーと言われるものです。

セミナーでは話す方(スピーカー)と聞く方(リスナー)に分かれており、
スピーカーはある特定の話題に対してリスナーにそれを説明します。

この時、両者に対して次のような勉強の効果があります。

(スピーカー)
人の前で話すためにそれなりの準備をしなければなりません。
必然的に勉強になるわけですが、話している時に
再び分からなくなる時があります。
これは自分が理解していなかったことを意味しているのです。
自分だけの理解だけではなく、それをよく理解していない人にも
理解させる必要があります。
これは良い思考訓練になります。
プレゼン能力の向上にもつながります。

ここに河東先生のセミナーの準備について書いてあります。
竹山先生の文章はこちら

(リスナー)
数学の話を聞くだけではなく、能動的に質問をしてお互い理解して行く
責任があります。
授業を一方的に聞くだけだったり、家で本を読むだけより、自分の理解の
助けになることが多いです。

ちなみに、本を読むことが悪いとは言いませんが、本は抽象的に書かれていることが多く、
一体それで何をしたいのかはっきり書いていないものも結構あります。
基礎数学の分野では基礎すぎで(つまり応用がありすぎて)
何をしたいのかさっぱりわからないことがあります。
必ずやらされる線形代数の内容は重要ですが、
内容は面白くないですよね。
いわば、スポーツをする前の筋トレだと思って下さい。


「話を元に戻せば」
セミナーは普通の授業より少人数であり、その分積極的に質問したり
議論したりすることが中心となります。
学問を本当に体得するにはこのような積極的な姿勢がないと中々うまく行きません。
セミナーは双方の立場で学習能力の向上につながるのです。

外書輪講や卒業研究のセミナーはそのパターンの勉強法です。

[自主ゼミ]
自主ゼミ(自主セミナー)とは、多くの場合、学生同士で行うもので、
同じような学力の人たちが自主的に集まってある一冊の本を読み進めたり、
議論したりするものです。
大学生が積極的に学べる場です。

学類で習うような数学は、数学の基礎の部分の一部だけで、
授業だけで全て補うのは無理があります。
多くの大学ではそのような自主ゼミサークルがあり、自分たちで
勉強を進めています。

私も学部の頃に友達と自主ゼミをよくやっていました。
(周りは数学オタクが多かった。。。)
終わった後にそのまま遊びに行ったり、みんなでご飯を食べに行ったり
も良くしていました。

自主ゼミに先生が入る場合がまれにありますがこれは単なる監督、
もしくは辞書がわりのような役目です。

[大学内で行われているナントカセミナー]
(ナントカには分野の名前が入ります。)
話している人が先生だったり、院生だったりしていますが、
セミナーという名前の通り、いくら偉い先生だからと言って気後れすることなく
ジャンジャン質問してみましょう。
普通1時間くらいで終わってしまい、話者の結果の説明もあったりするので
最初から専門的な話が飛び交うことが多いです。
良心的な人なら、易しいところからの解説があるかもしれません。

[集中講義]
短期集中的に行われる講義で、4,5日連続で講義があります。

しかし普通の講義と同じ種類で、出席やレポートがある場合があり、
単位を取得することができます。
大抵学外から人を雇ってきてもらいます。
しかし、これも少人数で有ることもあり、専門的な授業ではありますが、
密度の濃い授業になります。
名前こそ講義となっていますが、実態は短期集中型セミナーと
思って良いでしょう。

学部4年生くらいで理解できる内容で始まることが多いです
数学の最先端の話が聞ける機会でもあります。
その分野の専門家のいない大学の数学科の教官にとっても
絶好の勉強の機会となります。

[合宿型セミナー]
文字通り、泊まり込みで何処かの施設を借りて、集中講義のような
ことを行うものです。
この場合、何人かの話し手がいます。
普段の集中講義では、講義が終わってさっさと帰ってしまう
場合が多く、理解できないところが残ったり、物足りなさを感じる時があります。
合宿型であれば、講義が終わってからでも
講演者に詰め寄って夜通し議論することもできます。
そんなに熱心な人は中々いませんが。

私も院生の頃にこのようなセミナーに参加したことがあり、
数学についてを話しているのは山みちを歩いている時だったり、
みんなでご飯を食べている時だったり、
温泉の中だったりしていました。
夜、飲みかいさながらの議論もありました。

また、数学者と数学の話をしながら山道を巡って遭難しそうに
なったこともありました。

また、問題解決のための合宿型セミナーもあります。
つまり、参加者が問題を複数持って来ておいて、
その場で問題を提示し、みんなで議論しながら答えを探して行くものです。
日本ではこのようなセミナーはあまり見かけませんが、
海外では組み合わせ論などの研究者が集まってこのような
セミナーを開いているところがあるようです。

このような合宿型のセミナーでは
普段とは違う環境で勉強をすることで集中力が増したり、
友達との接触でモチベーションを上げる機会にもなります。

このようなセミナーに参加するには数学教室の掲示板や人づて、
インターネットなどで情報を得ましょう。










2014年6月2日月曜日

位相空間と距離空間


位相空間と距離空間

3年生で習う一般の位相空間がわからなくてつまづく人が多いようです.

そのためには2年生で習う距離空間の内容が理解できているかどうかがカギとなります.
キチンと理解していれば一般の位相空間でも理解はできると思います。

なので、もし位相空間がわからなくなったときはもう一度、距離空間の復習から始めてください.
内田伏一の教科書「集合と位相」でいえば、4章の内容です.
主なトピックは
  • ユークリッド空間の性質
  • ユークリッド空間の開集合、閉集合
  • 一般の距離空間、距離の性質と距離の定義
  • 距離空間の開集合、閉集合
  • 距離空間の開集合の満たす性質
  • ε-近傍
  • 連続写像の定義
  • 集積点
です.
学習の流れとしては、ユークリッド空間 → 距離空間 → 位相空間
で、この順に一般化されています.


開集合、閉集合、連続写像

距離空間や位相空間の理解において、重要なのは、
  1. 開集合
  2. 閉集合
  3. 連続写像
のその定義(性質)です.
距離空間の場合にはその定義は重要になります.
まず、$B_\epsilon(p)=\{x\in X|\ d(p,x)<\epsilon\}$ を
$\epsilon$-近傍といいます.つまり、$p$ から距離 $\epsilon$ 以内
にある点全体です.


1.開集合の定義(性質)は、

「開集合 $U$ の任意の点 $p$ は、$p$ を含むある $\epsilon$-近傍 $B_\epsilon(p)$ が、 $U$ の中に入れることができる」
です.つまり、

 $$p\in B_\epsilon(p)\subset U$$

となる開集合 $A$ がとれるということです.

2.閉集合の定義(性質)は、

「閉集合は開集合の補集合である」
です.
 そして、

3.連続の定義は、

「距離空間 $U,V$ の間の写像
$$f:U \to V$$
が $p\in U$ で連続であるとは、
任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $\delta>0$ が存在して、
$B_\delta(p)\subset f^{-1}(B_\epsilon(f(p)))$
となる。」
です. 

これは、実数上の連続関数のときのあの $\epsilon-\delta$ 論法と全く同じものです.

イプシロンデルタ論法は微積の時間に、論理の勉強と共に大変苦労したと思います。
1変数関数の連続を復習すると
$a\in {\mathbb R}$ で関数 $f(x)$ が連続とは、
「任意の $\epsilon>0$ に対して $\delta>0$ が存在して、
$$|x-a|<\delta ならば |f(x)-f(a)|<\epsilon$$
を満たす.」
でした.

位相空間では

距離空間における $\epsilon$-近傍は、位相空間では、単に開集合として一般化されます.

つまり、位相空間においては、上の性質は

$U$ が開集合のとき、、
「$U$ の任意の点 $p$ に対して、
$$p\in A\subset U$$
となる開集合 $A$ が存在する」

となりますし、連続写像は、
「$f(p)$ の任意の開集合 $U$ の逆像に $p\subset A\subset f^{-1}(U)$ となる開集合 $A$ が存在する.」

実はこれは、任意の開集合 $U$ の逆像 $f^{-1}(U)$ が再び開集合であるといっても同じです.


近傍について

また、位相空間や距離空間において、任意の点 $x$ の近傍 $B$
とは、$B$ の中に、$x$ を含む開集合(開近傍)が存在することです.
なので、距離空間において $B$ を $\{x|d(x,p)\le \epsilon\}$ とするとこれは近傍になります.
また、$x$ を含む任意の開集合は全て$x$ の近傍になりえます。

位相空間の開集合はどうやってさだめるのか? 

距離空間においては、開集合を決めるのは簡単です.まずは $\epsilon$-近傍を定めておいて、その近傍が入るように開集合を作っていけばよいですが、開集合が完成しますが、距離がない状態において開集合をどうやって定めるのか?

距離空間のように開集合を定める方法がないので、こちらから、「これが開集合だぞ」と定めてあげる必要があります.
そのとき、開集合となるための条件が、位相空間の開集合の3つの条件
  1. 空集合は開集合と定める.
  2. 有限個の開集合の共通集合は開集合となる.
  3. 任意個の開集合の和集合は開集合となる.

となるのです.

位相空間や距離空間を理解するためのもっとも基本的な要素は、

・開集合、
・閉集合、
・連続
です.これらの定義からそのイメージを正確にもつことが大事です.
問題を解くときには、上で書いたような性質や定義に戻れるようにしておきましょう.