2025年6月9日月曜日

数学リテラシー2(第4回)

 [場所:2H101(火曜日15:15〜16:30, 16:45〜18:00)](2025年度)



第3回に引き続き数学リテラシー2の第4回目を行いました。

4回目は $\epsilon$-$\delta$ 論法を用いた関数の連続性の定義を行いました。

まず、関数 $f(x)$ の $x=a$ での極限についての定義をしておきます。
関数 $y=f(x)$ が$x\to a$ において限りなく $\alpha$ に近づくことを
定義します。つまり、$x=a$ の周りで、$x$ がどのように $a$ に近づいても
$f(x)$ が $\alpha$ に近づくことを定義をします。

それをどのように定義したら良いか?

まずは、それを否定してみます。
近づくことを数列を用いて表すことができます。
つまり、それは

ある数列 $a_n$ があって、それが $a$ に収束するが、$f(a_n)$ が $\alpha$ に
収束しない

ことであることになります。
つまり、$x=a$ にどのように近づく数列があっても $f(a_n)$ が $\alpha$ に近づく
の否定です。ある近づく数列 $a_n$ があって、$f(a_n)$ が $\alpha$ に近づかない。

前回までで、 $\epsilon$-$N$ 論法をやりましたから、それを用いて考えていきます。

もう一度言うと、数列 $a_n$ が存在して、
$a_n\to a$ ・・・① 
だが、 
$f(a_n)\not\to \alpha$ ・・・②
であることになります。

これを、$\epsilon$-$N$ 論法で言い換えると
① から、$a_n$ が $a$ に近づくことは、$\forall \delta>0$ に対して、$\exists N\in {\mathbb N}$ に対して
$\forall n>N$ に対して $|a_n-a|<\delta$ となります。
②から、$\exists \epsilon>0$ に対して $\forall N’\in {\mathbb N}$ に対して、$\exists n>N’$ に対して、$|f(a_n)-\alpha|\ge \epsilon$ となります。

このことを用いて、以下の命題を示すことができます。


命題
以下の1. と2. は同値である。
(1) 数列 $a_n$ が存在して、 $a_n\to a$ かつ $f(a_n)\not\to \alpha$ となる。
(2) $\exists \epsilon>0$ と $\forall \delta>0$ に対して、$|x-a|<\delta$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ を満たす $x$ が存在する。 


証明
(1) が成り立つことを書き下すと次のようになります。

$\forall \delta>0$ に対して $\exists N\in {\mathbb N}$ に対して $\forall n>N$ に対して$|a_n-a|<\delta$ を満たし、
かつ
$\exists \epsilon>0$ に対して $\forall N’\in {\mathbb N}$ に対して$\exists n’>N’$ に対して$|f(a_{n’})-\alpha|\ge \epsilon$ 
を満たします。
ただし、①と②は別々の命題なので、$\epsilon>0$ と $\delta$ は独立に選びます。
お互いに依存しません。
ただ、$N$ は$\delta$ に依存して決まります。

なので、
$\exists\epsilon>0$ と $\forall \delta>0$ に対して、1つ目の条件から、$N\in {\mathbb N}$ が存在して、$ n>N$ に対して $|a_n-a|<\delta$ が成り立ちます。
ここで $\exists \epsilon>0$を先に書いた理由は、$\forall \delta>0$ $\exists \epsilon>0$ なら
$\epsilon>0$ が $\delta$ に依存する形になるからです。

また、2つ目の条件から、
$N’=n$ とすれば、$n’>N’$ なる $n’$ を取り直して、$|f(a_{n’})-\alpha|\ge \epsilon$ が成り立つようにできます。
このとき、$n>N$ となる任意の $n$ に対して $|a_n-a|<\delta$ が成り立ちますので、$|a_{n’}-a|<\delta$ 
も成り立ち続けます。
よって、$a_{n’}=x$ とおけば、

$\forall \epsilon>0$ と $\exists\delta>0$ に対して、$|x-a|<\delta$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ となる $x$ が
存在したことになります。

よって(2) がいえました。

また、(2) を仮定します。

このとき、数列 $a_n$ を作っていきます。
$\exists \epsilon>0$ をとり、$\delta=1$ とするとことで、
$|x-a|<1$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ となる $x$ が存在します。
それを $a_1$ とおきます。
また、同様に、

$\exists \epsilon>0$ をとり、$\delta=\frac{1}{2}$ とするとことで、
$|x-a|<1$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ となる $x$ が存在します。
それを $a_2$ とおきます。

これを繰り返すことで、
$\exists \epsilon>0$ をとり、 $\delta=\frac{1}{n}$ とすることで、
$|a_n-a|<\frac{1}{n}$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ となる $a_n$ をとることができます。

このとき、

$|a_n-a|<\frac{1}{n}$ であるから、挟み撃ちの原理から $a_n\to a$ であることがわかり、
$\exists \epsilon>0$ に対して、$|f(a_n)-\alpha|\ge \epsilon$ であることから
特に、$f(a_n)\not\to \alpha$ であることがわかります。

よって、(1) がいえました。$\Box$

この
(2) $\exists \epsilon>0$ と $\forall \delta>0$ に対して、$|x-a|<\delta$ かつ $|f(x)-\alpha|\ge \epsilon$ を満たす $x$ が存在する。 

を否定してやったものを考えれば、
$f(x)$ が  $x\to a$ ならば $f(x)\to \alpha$ になることを定義できます。
つまり次の定義をすれば良いことになります。

定義
$f(x)$ が $x\to a$ での極限が $\alpha$ であるとは、
任意の $\epsilon>0$ に対して、ある $\delta>0$ が存在して、
$0<|x-a|<\delta$ となる任意の $x$ に対して $|f(x)-\alpha|<\epsilon$ 
が成り立つことを言い、このとき、$\lim_{x\to a}f(x)=\alpha$ とかく。


この3行目の文章は、簡潔に
$0<|x-a|<\delta\Rightarrow |f(x)-\alpha|<\epsilon$ 
とかくこともできます。

この定義は、$x=a$ の値 $f(a)$ が定められていなくても$x=a$ に近づく数列を取ることが
できれば定義できます。
$f(x)$ が $x\to a$ であるときに$f(x)$ が$\alpha$ に近づくことが定義されました。

この定義を使って、
$x=a$ での値 $f(a)$ が存在するとき、 $f(x)$ の $x=a$ での連続性を以下のように
定義することができます。

定義
$f(x)$ が $x=a$ で連続であるとは、$\lim_{x\to a}f(x)=f(a)$ であることである。
つまり、書き下すと、
$\forall \epsilon>0$ と $\exists\delta>0$ に対して、$0<|x-a|<\delta$
なら、$|f(x)-f(a)|<\epsilon$ が成り立つ。
となります。

このように、$\epsilon$ を $\delta$ を用いて関数の連続性を定義して、
それらを用いて関数の連続性や不連続性を示す方法を
$\epsilon$-$\delta$ 論法と言います。

この定義を使って以下、いくつかの例で $\epsilon$-$\delta$ 論法を実践してみましょう。

例1
関数 $f(x)=x$ が $x\to 0$ のとき $0$ に近づく。


つまり、$f(x)=x$ が $x=0$ において連続であることです。

任意の $\epsilon>0$ に対して、
$0<|x|<\delta$ に対して、$|x|<\epsilon$ となるような $\delta$ を探せば良いことになります。
この場合、$\delta=\epsilon$ として取れば良いことになります。
なぜなら、$0<|x|<\delta$ ならば、$0<|x|<\epsilon$ が成り立ち、$|x|<\epsilon$ が成り立つからです。
後半は自明なことを言っています。

同じように以下を示しましょう。

例2
$f(x)=x^2$ が $x=1$ で連続である。


$\forall \epsilon>0$ に対して、ある $\delta>0$ が存在して、
$|x-1|<\delta$ となる任意の $x$ に対して、$|x^2-1|<\epsilon$ が成り立つ
ように$\delta$ を定められるかどうかですが、

$|x^2-1|=|x-1|\cdot|x+1|<\delta(|x-1+2|)<\delta(\delta+2)<\epsilon$ となり、
この2次不等式を解けば目標の $\delta$ を得られますが、
2次不等式を厳密に解かなくても、条件を満たす $\delta$ が存在することを
示すだけでいいです。つまり $\delta$ を十分小さく取れば良いのだから
例えば、$\delta<1$ くらい仮定しておきます。
このくらい小さくとっても $\delta>0$ を満たす $\delta$ はたくさんありますので問題はありません。
ただ、この不等式を使って、$\delta(\delta+2)<1\cdot (1+2)=3$とすると、任意にとった
$\epsilon$ より小さくは取れませんので、中途半端に
$\delta(\delta+2)<\delta(1+2)=3\delta$ と $\delta$ の部分を残しておきます。
そうすると、$\delta<1$ だけではなく、$\delta<\frac{\epsilon}{3}$ と取ることで、
$\delta(\delta+2)<\epsilon$ となり、$\epsilon>0$ より小さくすることができます。
$\delta<\frac{\epsilon}{3}$ となる$\delta$ も十分小さく$\delta$ を取ることでそのような
$\delta$ は存在しますので、

合わせて、

任意の $\epsilon>0$ に対して、$0<\delta<\min\{1,\frac{\epsilon}{3}\}$ のように $\delta$ を取ることで、
$|x-1|<\delta\Rightarrow |x^2-1|<\epsilon$ を満たすようにができました。

よって、$y=x^2$は $x=1$ で連続であることわかります。

次に、極限値が存在しない例を扱います。

例3
$f(x)=\sin\frac{1}{x}$ が $x\to 0$ で、極限 $\alpha$ を持たない。


$\alpha\neq 1$ であるとします。
このとき、ある数列 $a_n$ で、$a_n\to 0$ が成り立つが、
$f(a_n)\not\to \alpha$ になることを示します。

$a_n=\frac{1}{(2n+\frac{1}{2})\pi}$ とおくと、
$a_n\to 0$ であり、
$f(a_n)=\sin((2n+\frac{1}{2})\pi)=\sin\frac{\pi}{2}=1$ が成り立ち、
$f(a_n)\to 1$ であるから、$f(a_n)\not\to\alpha$ となります。
つまり、
$f(x)$ $x\to 0$ で $\alpha$ に極限値を持ちません。

$\alpha=1$ としても、
$a_n=\frac{1}{2n\pi}$ とおくと、$a_n\to 0$ ですが、
$f(a_n)=\sin 2n\pi=0$ となるので、
$f(a_n)\to 0$ となります。
よって $f(a_n)\not\to 1$ となります。

よって、$f(x)=\sin\frac{1}{x}$ は $x\to 0$ においてどの値にも極限値になりません。
つまり $\lim_{x\to 0}\sin \frac{1}{x}$ は存在しません。

なので、実数関数 $y=f(x)$ を
$$f(x)=\begin{cases}\sin\frac{1}{x}&x\neq 0\\0&x=0\end{cases}$$
としても、$f(x)$ は $x=0$ で連続ではありません。

もちろん $x=0$ での値をどのように定めても連続にはなりません。

他にもやっておきます。

例4
$y=e^x$ が $x=x_0$ で連続である。


$\forall \epsilon>0$ に対して、$\delta=\log(1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}})$ とします。
$0<|x-x_0|<\delta$ が成り立つとします。

仮に、
$0<x-x_0<\delta$ とします。このとき
$|f(x)-f(x_0)|=e^x-e^{x_0}=e^{x_0}(e^{x-x_0}-1)<e^x_0(e^\delta-1)=e^{x_0}(e^{\log (1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}})}-1)=e^{x_0}(1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}}-1)=\epsilon$ 
が成り立ちます。
また、
$0<x_0-x<\delta$ とします。このとき、
$|f(x)-f(x_0)|=e^{x_0}-e^{x}=e^{x_0}(1-e^{x-x_0})<e^{x_0}(1-e^{-\delta})$
$=e^{x_0}(1-e^{-\log(1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}})})= e^{x_0}(1-\frac{1}{1+\frac{\epsilon}{e^{x_0}}})$
$= e^{x_0}(1-\frac{e^{x_0}}{e^{x_0}+\epsilon})=e^{x_0}\frac{\epsilon}{e^{x_0}+\epsilon}<\epsilon$ 
が成り立ちます。
よって、どちらにしても、つまり$|x-x_0|<\delta$ ならば、
$|f(x)-f(x_0)|<\epsilon$ が成り立ちます。

よって、$f(x)=e^x$ は各点で連続であることがわかります。

2025年6月5日木曜日

数学リテラシー2(第3回)

[場所:2H101(火曜日15:15〜16:30, 16:45〜18:00)](2025年度)



今回第3回目の数学リテラシー2を行いました。

数学リテラシー2の3回目をやって行きたいと思います。

今回も前回に引き続き$\epsilon$-$N$ 論法になります。


はじめに数列の収束の定義をしておきます。


任意の $\epsilon$ に対して $N\in {\mathbb N}$ が存在して、$N$ よりも大きい任意の自然数 $n$ に対して

$|a_n-\alpha|<\epsilon$ が成り立つ


つまり、記号によって言い表すと $\forall \epsilon, \exists N\in {\mathbb N}, \forall n>N \text{ such that } |a_n-\alpha|<\epsilon$ 

となります。


これが収束の定義でした.

 

これに基づいて数列の性質を見て行きたいと思います。

 

先週最後にやったことは数列 $a_n$ と $b_n$ が収束するときにその和も

収束するということでした。


今回は次を証明します。


命題

数列 $a_n$ が $\alpha$ に収束するとき定数倍 $ca_n$ も収束して、定数倍 $c\alpha$ に収束する.


ということです。


簡潔に言うと $a_n\to \alpha$ なら $ca_n\to c\alpha$ です。


このことは次のようにして証明できます。

(証明)

$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists N\in {\mathbb N}$ に対して、$\forall n>N$ なら $|a_n-\alpha|<\frac{\epsilon}{|c|}$ が成り立ちます。

このとき、


$$|ca_n-c\alpha|<|c|\cdot|a_n-\alpha|<|c|\cdot\frac{\epsilon}{|c|}<\epsilon$$ 

となります。よって、$ca_n\to c\alpha$ が成り立つことがわかります。


ここで、わざわざどうして $|a_n-\alpha|<\frac{\epsilon}{|c|}$ と取ったのかというと、最後に

$|ca_n-c\alpha|<\epsilon$ を言うことで、定義を使っていることを明らかにしたかったからです。


次に教科書の命題を示して行きたいと思います。


命題

(1) $a_n\to \alpha$ かつ $b_n\to \beta$ とし、$a_n\le b_n$ とすると、$\alpha\le \beta$ である。

(2) $a_n\le c_n\le b_n$ かつ $a_n\to \alpha$ かつ $b_n\to \alpha$ であるとすると $c_n\to \alpha$

を満たす。

 

(2) の方の主張を挟み撃ちの原理と言います。


(証明) 

(1) を証明しましょう。

$\beta<\alpha$と仮定します。そのときに、$\epsilon=\frac{\alpha-\beta}{3}>0$ とおきます。

この時、

ある $N_1\in {\mathbb N}$ に対して $\forall n>N_1$ に対して $|a_n-\alpha|<\epsilon$ が成り立ち、

ある $N_2\in {\mathbb N}$ に対して $\forall n>N_2$ に対して $|b_n-\beta|<\epsilon$ が成り立ちます。

よって、$N=\max\{N_1,N_2\}$ とすると、$\forall n>N$ に対して、

$$b_n<\beta+\epsilon<\alpha-\epsilon<a_n$$

となるので、特に、$b_n<a_n$ がわかります。

これは仮定に矛盾するので、背理法から $\alpha\le \beta$ が成り立つことがわかります。


次に(2)を証明します

これも同様に、

ある $N_1\in {\mathbb N}$ に対して $\forall n>N_1$ に対して $|a_n-\alpha|<\epsilon$ が成り立ち、

ある $N_2\in {\mathbb N}$ に対して $\forall n>N_2$ に対して $|b_n-\alpha|<\epsilon$ が成り立ちます。

よって、$N=\max\{N_1,N_2\}$ とすると、$\forall n>N$ をとります。

このとき、

$$c_n-\alpha=c_n-b_n+b_n-\alpha\le b_n-\alpha<\epsilon$$

$$c_n-\alpha=c_n-a_n+a_n-\alpha\ge a_n-\alpha>-\epsilon$$

が成り立ち、よって

$$|c_n-\alpha|<\epsilon$$

が成り立つことがわかり、$c_n\to \alpha$ であることがわかります。 $\Box$ 


      

次に以下の例を示しましょう。

例  $a_n=\sqrt[n]{n}$ とすると $a_n\to 1$ となる。

 

この例は上の挟み撃ちの原理の応用例です。

(証明)

$n>1$ の時 $a_n>1$ であるから、$a_n=1+b_n$ とおくと、$b_n>0$ となる数列であることがわかります。この数列 $b_n$ が $b_n\to 0$ であることを示せば十分です。


そこで、

$n> 1$ のとき、

$$n=a_n^n=(1+b_n)^n\ge 1+nb_n+\frac{n(n-1)}{2}b_n^2>\frac{n(n-1)}{2}b_n^2$$

となり、

$$0<b_n<\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{n-1}}$$    

となります。

ここで、$\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{n-1}}$ が $0$ に収束することがわかれば、

挟み撃ちの原理から $b_n$ も $0$ に収束することがわかります。$\Box$


実際、$\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{n-1}}$ が $0$ に収束するでしょうか?

これも $\epsilon$-$N$ 論法によって証明することができます。


$\forall \epsilon>0$ に対して、$2/\epsilon^2+1<N$ となる自然数 $N$ をとれば、$\forall n>N$ とすると、

$$|\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{n-1}}-0|< \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{N-1}}<\epsilon $$

が成り立つことから、$\frac{\sqrt{2}}{\sqrt{n-1}}\to 0$ が成り立つことがわかります。$\Box$


次にこの補題を示します


補題

数列 $\{a_n\}$ が収束すれば、この数列は有界である。



つまり、$\{a_n\}$ が収束するなら、ある実数 $m,M$ が存在して、

$\forall n\in {\mathbb N}$ に対して $m\le a_n\le M$ であることになります。 

 

(証明) 

$a_n$ が $\alpha$ に収束するとします。

このとき、$\forall \epsilon>0$ に対して、$\exists N\in {\mathbb N}$ に対して

$\forall n>N$ なら、

$|a_n-\alpha|<\epsilon$ となります。

特に、$\alpha-\epsilon<a_n<\alpha+\epsilon$

また、$n\le N$ となる自然数は有限個しかないので、

$n\le N $なら

$$\min\{a_1,a_2,\cdots, a_N\}\le a_n\le \max\{a_1,a_2,\cdots, a_N\} $$

がわかる。

よって、これらを合わせて、

$$\min\{a_1,a_2,\cdots, a_n,\alpha-\epsilon\}\le a_n\le \max\{a_1,a_2,\cdots, a_N,\alpha+\epsilon\}$$

が成り立つので、

$a_n$ は有界であることわかります。 $\Box$ 



次に数列が収束する時その積の数列も収束することまた、商の数列の数列も収束することをみましょう。



命題

$a_n\to \alpha$ かつ $b_n\to \beta$ であるとき、

(1) $a_nb_n\to \alpha\beta$

(2) $a_n/b_n\to \alpha/\beta$ ただし、$\beta\neq 0$ かつ $n\in {\mathbb N}$ に対して $b_n\neq 0$ 


(証明)

(1)

$a_n$ と$b_n$ が収束することから、$b_n$ は有界であり、

任意の$n$ に対して $|b_n|<M$ となる実数 $M$ が存在します。


今、 $\alpha\neq 0$ と仮定します。

$a_n, b_n$ の収束性から、

$\forall \epsilon>0$ に対して、ある$N\in {\mathbb N}$ に対して $\forall n>N$ なら、

$|a_n-\alpha|<\frac{\epsilon}{2M}$ かつ $|b_n-\beta|<\frac{\epsilon}{2|\alpha|}$ が成り立ちます。
よって、

$$|a_nb_n-\alpha\beta|=|(a_n-\alpha)b_n-\alpha (b_n-\beta)|\le |a_n-\alpha||b_n|+|\alpha|\cdot|b_n-\beta|$$

$$<\frac{\epsilon}{2M}\cdot M+|\alpha|\cdot\frac{\epsilon}{2|\alpha|}<\epsilon$$

となります。

よって $a_nb_n\to \alpha\beta$ が成り立ちます。


(2) のほうの証明は省略します。$\Box$


次に、数列の単調増加性を定義します。


定義 数列 $\{a_n\}$ が単調増加であるとは、

$a_1\le a_2\le a_3\le\cdots$ が成り立つことである。

 

このとき、次の命題を証明することができます。


命題

数列 $a_n$ が単調増加であり上に有界であるなら、この数列は収束する.

 

(証明)

$A=\{a_n|n\in {\mathbb N} \}$ とすると、$A$ は上界が存在するので

$\sup A=\alpha$ とする。

このとき、$a_n$ が $\alpha$ に収束することを証明します。

前回の最後にやった命題を使うと、

$\forall \epsilon>0$ に対して、$\alpha-\epsilon<a_N$ となる $N\in {\mathbb N}$ が

存在します。また $n>N$ に対して

$a_N\le a_{N+1}\le a_{N+2}\le \cdots\le \alpha $であるから、

$-\epsilon <a_n-\alpha\le 0$ が成り立ちます。

特に、$|a_n-\alpha|<\epsilon$ が成り立ち、$a_n\to \alpha$ が成り立ちます。$\Box$



ではこの例を見て行きましょう


$a_n=\sum_{k=1}^n\frac{1}{k^2}$

とおくと、$a_n$ は収束する。

 

この数列はある実数に収束することを示すことができます。

どうしてかというと

$$\sum_{k=1}^n\frac{1}{k^2}<1+\sum_{k=2}^n\left(\frac{1}{k-1}-\frac{1}{k}\right)=1+1-\frac{1}{n}<2$$ 

上に有界です。また、$a_n$ が単調増加であることはすぐわかります。

よって、上の定理から、この数列は収束することがわかります。$\Box$

 

実際この数列の収束先は

$$\frac{\pi^2}{6}$$ 

になりますが、この収束先は簡単にはわかりませんが、

この値を求めることはバーゼル問題といい17世紀にオイラーによって初めて証明されました。