2022年1月27日木曜日

トポロジー入門(第12回)

[場所:オンライン(月曜日3限)]



今回は、連結性の残りと分離公理についてやりました。

連結性

連結に対して、連結成分があったように、
弧状連結に対しても弧状連結成分があります。
位相空間に対して、$a\in X$ に対して
弧 $f:[0,1]=I\to X$ で $f(0)=a$ となるもので、
$f(1)$ を集めたもの $\{f(1)|f:I\to X,f(0)=a\}$ を
$a$ の弧状連結成分といい、$C_{\text{path}}(a)$ とかきます。

例えば、前回の定理11.8で構成した$I\cup J$ は
$I, J$ がそれぞれが弧状連結成分になります。
ゆえに、弧状連結成分は閉集合になるとは限らず、開集合になるとも
限りません。
また、$a$ の弧状連結成分は、$a$ を含む弧状連結集合の中で最大のもの
となります。

また、次の連結性についても解説しました。

定義12.3
位相空間$(X,\mathcal{O})$ が $\forall x\in X$ と、
任意の近傍 $\forall V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
ある連結な近傍 $U\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、$U\subset V$ を
満たすとき、$(X,\mathcal{O})$ は局所連結であるという。

局所連結であることは、
基本近傍系として連結なものが取れることと同値になります。
特に、近傍として連結なものが取れる必要があります。

同様に、以下の定義をすることもできます。

定義12.4
位相空間$(X,\mathcal{O})$ が $\forall x\in X$ と、
任意の近傍 $\forall V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
ある弧状連結な近傍 $U\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、$U\subset V$ を
満たすとき、$(X,\mathcal{O})$ は局所弧状連結であるという。


連結ならば弧状連結であり、
局所連結ならば局所弧状連結になることも同様です。
また、同様に、各点において弧状連結な近傍が取れます。
これ以外に関係がないのかと思われるかもしれませんが
以下の定理があります。

定理12.1
連結かつ局所弧状連結なら弧状連結である。

証明
$a\in X$ に対して、$C_{\text{path}}(a)$ が開かつ閉集合であることを示せば、
連結性から $C_{\text{path}}(a)=X$ となり $X$ が弧状連結であることがわかります。
$\forall x\in C_{\text{path}}(a)$ に対して、弧状連結な近傍が取れるので、
それを $V$ とすると、最大性から、
$V\subset C_{\text{path}}(x)$ であることがわかります。
よって、$x\in C_{\text{path}}(a)$ は内点であるから、$C_{\text{path}}(a)$ は
開集合となります。

$x\in\overline{ C_{\text{path}}(a)}$ とします。
任意の近傍 $V\in \mathcal{N}(x)$ に対して、
弧状連結な近傍 $U\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、
$U\subset V$ であることがわかります。
ここで、$U\cap C_{\text{path}}(a)\neq \emptyset$
であり、$U\cup C_{\text{path}}(a)$ も弧状連結であるから、
弧状連結成分の最大性から、$U\subset C_{\text{path}}(a)$ が成り立ちます。
特に、$x\in C_{\text{path}}(a)$ が成り立ちます。
よって、$\overline{C_{\text{path}}(a)}\subset C_{\text{path}}(a)$ であることがわかります。
また、$C_{\text{path}}(a)\subset \overline{C_{\text{path}}(a)}$ であることから、
$\overline{C_{\text{path}}(a)}=C_{\text{path}}(a)$ であることがわかります。
よって、$C_{\text{path}}(a)$ が閉集合であることがわかります。

よって、$C_{\text{path}}(a)$ が開かつ閉集合であることがわかりました。$\Box$

以上より、連結性を4つ紹介して、その間に成り立つ定理について
まとめましたが、実際、以下のようにそれらが成り立つ位相空間が存在します。
以下にそのような位相空間の例を挙げておきます。


 連結局所連結弧状連結局所弧状連結
1点 
(※) ◯  ◯ ×
ワルシャワ円××
${\mathbb L}’$××
定理11.8×××

連結性を満たさない例については、各例に1点を加えれば実現できますので省略しています。
ワルシャワ円(ワルシャワサークル)とは、定理11.8(トポロジストのサインカーブ)の $I,J$ 
をつなげて連結にしたものを言います。こちらにその絵があります。
(※) の空間は ${\mathbb R}$ 上の補可算位相空間の cone があります。
位相空間 $X$ のcone $C(X)$とは $X\times I$ に $X\times \{1\}$ を1点に
潰して得られる商位相空間です。

また、補可算位相空間とは、開集合として補集合が高々可算個の点集合のものとする位相空間で、
${\mathbb R}$ 上で考えたものは、連結かつ局所連結だが、弧状連結ではなく局所弧状連結ではない空間になります。そのconeをとることで弧状連結だけが満たされて、
この条件を満たす空間ということになります。

また、${\mathbb L}$ は長い直線と呼ばれ、$[0,1)$ を非可算無限個つなげてできる
位相空間です。可算無限個つなげてできる位相空間は${\mathbb R}$ と同相になります。
それもこちらに解説があります。
ここで、 ${\mathbb L}'$ は無限遠点 $\{\infty\}$ を付け加えてできる空間になります。
付け加える(コンパクト化と言います)ことはまだ習っていませんが、$(0,1)$ に
1を加えて $(0,1]$ を作る操作だと考えてください。


分離公理

後半はハウスドルフ空間についておこないました。
位相空間の部分集合 $A,B$ が開集合によって分離されるとは、
$U,V$ を開集合として、$A\subset U$, $V\subset B$ を満たし、$U\cap V=\emptyset$
を満たすことを言います。

定義12.5
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ の任意の相異なる点 $p,q\in X$ に対して、
開集合 $U,V$ が存在して、$p\in U,q\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$
を満たす時、 $X$ はハウスドルフ空間という。

つまり、任意の相異なる2点が開集合によって分離される時にハウスドルフ空間と
言うのです。
公理「任意の相異なる2点が開集合によって分離される」を $T_2$ 公理ともいうので、
ハウスドルフ空間のことを $T_2$ 空間ということもあります。

例12.4
距離空間はハウスドルフ空間になります。
距離空間の相異なる点 $p,q\in X$ に対して、
$2\delta=d(p,q)$ とすることで、$p,q$ には、$B_d(p,\delta)$ と $B_d(q,\delta)$
が $p,q$ を分離することがわかります。

例12.5
$n$ 点集合が離散位相を持つならそれはハウスドルフ空間であることもすぐわかります。
逆に、有限点集合がハウスドルフなら離散位相空間になります。

よって、有限点集合上の離散位相ではないものは皆 $T_2$ 公理を満たさないことになります。

また、ハウスドルフ空間は位相的性質であることは簡単にわかります。

定理12.3 
ハウスドルフ性は位相的性質である。

また、ハウスドルフ空間の同値な言い換えがsいくつかあります。

定理12.3, 12.4
ハウスドルフ空間であることは以下のそれぞれと同値
  • $\Delta=\{(x,x)|x\in X\}$ が閉集合である。
  • $\{x\}=\cap \{\overline{W}|W\in \mathcal{N}(x)\}$ である。

(証明)ハウスドルフ空間であれば、$(p,q)\in \Delta^c$ は、$p\neq q$ であるから、
開集合 $U,V$ が存在して、$p\in U,q\in V$ を満たし、$U\cap V=\emptyset$ を満たす。
よって、$U\times V\subset \Delta^c$ であるから、$(p,q)\in \Delta^c$ は
内点。つまり$\Delta^c$ は閉集合。

逆に$\Delta^c$が閉集合であれば、$p\neq q\in X$ に対して、
$(p,q)\in W\subset \Delta^c$ となる開集合 $W$ が存在して、
直積位相から、$(p,q)\subset  U\times V\subset W$ が成り立ちます。
$U\times U\cap \Delta^c=\emptyset$ であるから、
$U\cap V=\emptyset$ となり、$X$ はハウスドルフ空間であることがわかります。

$X$ がハウスドルフ空間であるとします。
このとき、$x\in X$ に対して $x\neq y$ となる $y$ を取ります。
この時、開集合$U,V$ が存在して、$x\in U,y\in V$ とし、
$U\cap V=\emptyset$ となります。$x\in U\subset V^c$ であり、
$V^c$ は閉集合であるから、
$x\in U\subset \overline{U}\subset V^c$ であるから、
$y\not\in \overline{U}$ であるから特に、
$y\not\in \{\overline{W}|W\in \mathcal{N}(x)\}$
となる。

に、$\forall x\in X$ に対して、$\{x\}=\cap\{\overline{W}|W\in \mathcal{N}(x)\}$
が成り立つとすると、$y\neq y$ とすると、
$W\in \mathcal{N}(x)$ が存在して、$y\not\in \overline{W}$ となります。
$V=(\overline{W})^c$ また、$x\in U\subset W$ となる開集合 $U$ が存在するので、
$x\in U$ かつ $y\in V$ かつ $U\cap V=\emptyset$ となります。
よって$X$ がハウスドルフ空間となります。$\Box$


また、次の定理を示しました。

定理12.5
$X$ を位相空間、$Y$ ハウスドルフ空間とする。
$F:G:X\to Y$ を連続写像とする。今、$D\subset X$ を稠密集合とする。
$F|_{D}=G|_{D}$ であるとすると、$F=G$ が成り立つ。

関数 $F,G$ が等しいというのは、$\forall x\in X$ に対して、
$F(x)=G(x)$ となることを意味します。

(証明) 
$F,G:X\to Y$ に対して、ハウスドルフ空間 $Y$ に対して、$F\neq G$
であるとします。
この時、$F(x)\neq G(x)$ となる $x\in X$ が存在します。
ハウスドルフ性から、$Y$ の開集合 $U,V$ が存在して、$F(x)\in U$, $G(x)\in V$
かつ $U\cap V=\emptyset$ となります。

$x\in F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)$ であり、$F,G$ が連続であることから、
$F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)$ は $X$ の開集合となります。

よって、$F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)\cap D\neq \emptyset$ ですから、
$d\in D$ であって、$d\in F^{-1}(U)\cap G^{-1}(V)$ を満たします。
よって、$F(d)\in U$ かつ $G(d)\in V$ となります。$U\cap V=\emptyset$ であることから
少なくとも、$F(d)\neq G(d)$ であるから $F|_D\neq G|_D$ となります。$\Box$

この定理から、$X$ 上の ${\mathbb R}$ に値をもつ連続関数の集合 $C(X)$
の濃度を決定することができます。

$X={\mathbb R}$ とすると、可算集合 ${\mathbb Q}$ からの連続関数
によって一意的に決定されるから、

$$|C({\mathbb R})|\le |{\mathbb R}^{\mathbb Q}|= (2^{\aleph_0})^{\aleph_0}\le 2^{\aleph_0\times \aleph_0}\le 2^{\aleph_0}$$

となります。一方、$C({\mathbb R})$ には定数関数が ${\mathbb R}$ の分だけ存在するので、
$|C({\mathbb R})|\ge |{\mathbb R}|=2^{\aleph_0}$ となり、
$|C({\mathbb R})|=2^{\aleph_0}=|{\mathbb R}|$ が成り立ちます。

つまり、$C({\mathbb R})$ は 連続体濃度存在することがわかります。


又、ハウスドルフ空間に対して以下の性質が成り立ちます。

定理12.6
ハウスドルフ空間の任意の部分空間もハウスドルフ空間である。

定理12.7
全ての因子空間がハウスドルフ空間であるような任意の直積位相空間も
ハウスドルフ空間である。

これらの証明はそれほど難しくないので、証明はここでは省略します。

また、$T_2$ 公理を弱くした次の $T_1$ 公理もあります。

定義12.6
位相空間 $(X,\mathcal{O})$ が相異なる $x,y$ に対して、
$\exists U,V\in \mathcal{O}((x\in U,y\not\in U)\wedge(x\not\in V,y\in V))$
$T_1$ 公理と言う。$T_1$ 公理を満たす空間を
$T_1$ 空間という。

$T_1$ 公理は、$\exists U,V\in \mathcal{O}(x\in U,y\not\in U))$
というだけで同じことです。
というのも、$x,y$ を $y,x$ にするだけで、もう一つの条件も満たすからです。

ここで $T_1$ 空間には次の性質があります。

定理12.8
$(X,\mathcal{O})$ が $T_1$ 空間であることと、 $X$ の各点が閉集合であることは
同値である。


(証明) $X$ が$T_1$ 空間であるとします。
$\forall x\in  X$ に対して、$y\in\{x\}^c$ をとります。
この時、$\exists U\in\mathcal{O}$ が存在して、$y\in U$ かつ$x\not\in U$ 
つまり、$U\subset \{x\}^c$ となる。つまり、$y$ は $\{x\}^c$ の内点。
よって、$\{x\}^c$ は開集合であるから、$x$ は閉集合となります。

$\forall x\in X$ に対して $\{x\}$ が閉集合であるとします。
このとき、$x,y\in X $を $x\neq y$ とします。
$U=\{y\}^c$ と $V=\{x\}^c$ とおきます。
この時、$U,V$ は開集合であり、$x\in U,y\not\in U$ かつ $y\in V,x\not\in V$
となります。つまり、$X$ は $T_1$ 空間となります。 $\Box$

例12.8
$T_1$ 空間であってハウスドルフ空間ではないものが存在します。
例えば、無限集合上の補有限位相 $(X,\mathcal{O}_{\text{cf}})$ を取りますと、
$(X,\mathcal{O}_{\text{cf}})$ は $T_1$ 空間にはなりますが、
ハウスドルフ空間にはなりません。
実際、空ではない任意の開集合が交わりを持つことがわかります。

2022年1月5日水曜日

トポロジー入門(第11回)

[場所オンライン(月曜日3限)]


今回は、連結性と弧状連結性についてやりました。

連結性
位相空間が連結であることは前回定義しました。

定義10.3
位相空間 $X$ が空でも $X$ でもない開集合 $U,V$ 
を用いて、$X=U\sqcup V$ と表せないとき、 $X$ は
連結といい、$X$ が連結ではないとき
$X$ は不連結という。

この定義を次のように言い換えることができます。

定理10.6
$X$ が連結であることは、$X$ の開かつ閉集合は $X$ もしくは 
$\emptyset$ のみであることと同値である。

となる。
連結集合について定義しておきます。

定義11.1
$(X,\mathcal{O})$ を位相空間とする。
$A\subset X$ が連結集合であるとは、相対位相
$(A,\mathcal{O}_A)$ が連結空間であることとして
定義する。

つまり、このことは言い換えれば、

任意の開集合 $U,V\in \mathcal{O}$ に対して、
$A\subset U\cup V$ かつ
$A\cap U\cap V=\emptyset$ 
なら、$A\subset U$ もしくは $A\subset V$
ということになります。

これは、
$(A\cap U)\cup(A\cap V)=A$ であることは、$A\subset U\cup V$ と同値
$(A\cap U)\cap (A\cap V)=\emptyset$ であることは $A\cap U\cap V=\emptyset$ と同値
$A\cap U=A$ であることは $A\subset U$ と同値
$A\cap V=A$であることは $A\subset V$ と同値
であることからわかります。

最終的に、$A\subset U$ もしくは $A\subset V$ が成り立つのですが、
このうちどちらかしか成り立ちません。

いくつかの例の前に以下を示しておきます。

定理11.1
$({\mathbb R},\mathcal{O}_{d_1})$ は連結である。

(証明) ${\mathbb R}$ が連結でないとします。
${\mathbb R}=U\sqcup V$ となる空ではない開集合 $U,V$ が
存在することになります。
$a\in U$ かつ $b\in V$ をとり、
$a<b$ としておきます。もしそうでなかったら、$U,V$ の役目を入れ替えれば
実現出来ます。
$c=\sup\{x\in U|x\le b\}$
とおきましょう。
このとき、$\epsilon >0$ が存在して、$B_{d_1}(c,2\epsilon )\subset U$ となります。
しかし、$c+\epsilon\in U$ であり、$c+\epsilon<b$ であることから、
$c=\sup\{x\in U|x\le b\}$ であることに反します。
よって、$c\in V$ ということになります。
同様に、$\delta>0$ が存在して、$B_{d_1}(c,\delta)\subset V$  となり
$(c-\delta,c]\subset V$ が成り立ちます。
これは、$c$ が$\{x\in U|x\le b\}$ の上限であることに反します。
もし上限であるなら、$\forall \epsilon>0$ に対して、$c-\epsilon <x\le c$
となる$x\in U$ が存在するからです。
よって $c$ は $U,V$ のどちらも含まれないので ${\mathbb R}=U\cup V$
であることに反します。
よって、${\mathbb R}$ が連結になるということになります。$\Box$

ここで次の定理を示しておきましょう。

定理11.2
$X,Y$ を位相空間とする。$f:X\to Y$ を全射連続写像とする。
$X$ が連結なら $Y$ も連結である。

(証明) $U\subset Y$ を開かつ閉集合とします。
このとき、$f^{-1}(U)$ も開かつ閉集合です。
$X$ は連結なので 
$f^{-1}(U)=\emptyset$ か $f^{-1}(U)=X$ となります。
$Y$ が全射であることから、$U=\emptyset$ もしくは $Y$ となります。
これは $Y$ が連結であることを意味します。$\Box$

このことから、$f$ が全射でなくても、$X$ が連結なら
$f(X)$ も連結であることが分かります。

また、$A\subset X$ が連結集合であるなら、$f(A)$ は連結
ということになります。

つまり、
連結集合の連続写像による像(連続像といいます)は連結ということになります。

このことから、連結性は位相的性質になることも分かります。
なぜなら
$f:X\to Y$ が同相であるとします。
このとき、$X$ が連結とすると、定理11.2から $Y$ も連結になります。
よって、連結性は位相的性質になるからです。

次の定義をしましょう。

定義11.2
$a\in X$ に対して、$a$ を含む連結集合の内最大のものを
$a$ の連結成分といい、$C_X(a)$ と書く。
また簡単に $C(a)$ と書くこともある。

$a\sim x$ は同じ連結成分に属するとして $X$ 上に同値関係を定めることができます。
そうすると、
$X$ のこの同値関係の同値類によって、分解
$$X=\sqcup_{\lambda\in \Lambda}C_X(a_\lambda)$$
を与えることができます。
これを連結成分分解といいます。

$X$ が連結であることは、$X=C_X(a)$
のように$X$ の任意の元がただ1つの連結成分に属することと同値になります。

ここで次の定理を示しておきます。

命題11.2
$A\subset X$ が開かつ閉集合であれば、
$A$ は $X$ の連結成分のいくつかの和集合となる。

(証明) $A$ が開かつ閉集合とします。このとき、
$\forall a\in A$ に対して、$A\cap C_X(a)\subset C_X(a)$
より、$A\cap C_X(a)$ は $C_X(a)$ の開かつ閉集合になります。
$C_X(a)$ は連結であり、$a\in A\cap C_X(a)$ は空ではないから
$A\cap C_X(a)=C_X(a)$ となります。
よって、$C_X(a)\subset A$ ととなり、よって、$\forall a\in A$ に対して、$C_X(a)\subset A$ であるから
$\cup_{a\in A}C_X(a)\subset A$ また、$A\subset \cup_{a\in A}C_X(a)$
であるから
$$A=\cup_{a\in A}C_X(a)$$
となり、$A$ はいくつかの連結成分の和集合となります。$\Box$

この証明の途中で用いたことを復習しておきます。

相対位相の閉集合について
$A\subset X$ での相対位相において、
$A$ における開集合は $X$ の開集合 $U$ を用いて $A\cap U$ と書き表されます。

(証明) $A$ における閉集合 $F$ は、$A-F=A\cap F^c$ より $A$ における開集合だから、
$A\cap F^c=A\cap U$ となる $X$ の開集合 $U$ が存在します。
よって、この補集合を取ると、
$A^c\cup F=A^c\cup U^c$
$A^c\cap F=\emptyset$ であるから、$A^c$ の部分を取ると、
$F=(A^c\cup U^c)\cap A=(A^c\cap A)\cup (U^c\cap A)=A\cap U^c$
よって、$A$ 上の閉集合は、$X$ のある閉集合 $G$ を用いて、
$A\cap G$ とかけることがわかります。

次の定理を示しましょう。

定理11.4
連結集合 $A$ に対して、$A\subset B\subset \overline{A}$ 
を満たす任意の集合 $B$ は連結である。

(証明) $B\subset U\cup V$ を満たす $X$ の開集合
が $B\cap U\cap V=\emptyset$ を満たすとします。
このとき、
$B\cap U\neq \emptyset$ を満たすと仮定します。
このとき、 $B\subset \overline{A}$ であるから
$\overline{A}\cap U\neq \emptyset$ です。
$x\in\overline{A}\cap U$ をとります。
このとき、$U$ は開集合だから $U\in \mathcal{N}(x)$ となります。
よって、$A\cap U\neq \emptyset$ を満たします。
$A$ は連結だから、
$A\subset U\cup V$ かつ $A\cap U\cap V=\emptyset$ より
$A\subset U$ もしくは $A\subset V$ です。
しかし、$A\cap U\neq \emptyset$ であるから $A\subset U$ です。
よって、$A\cap V=\emptyset$ であるから $\overline{A}\cap V=\emptyset$
である。つまり、$B\cap V=\emptyset$ です。
このことから、$B\subset U$ が分かります。

また、$B\cap V\neq \emptyset$ である場合からも、
同じように $B\subset V$ が証明することができます。$\Box$

この定理から次が成り立ちます。

定理11.5
任意の $a\in X$ に対して、連結成分 $C(a)$ は閉集合である。

(証明) $C(a)\subset \overline{C(a)}$ が成り立つ。
また定理11.4から $\overline{C(a)}$ は連結になります。
連結成分の最大性により、$\overline{C(a)}\subset C(a)$ 
が成り立ちます。この包含関係から、
$C(a)=\overline{C(a)}$ が成り立つ、つまり $C(a)$ が閉集合になります。

$(a,b)\subset {\mathbb R}$ は ${\mathbb R}$ と同相であるから、
連結は位相的性質なので、$(a,b)$ も連結性になります。
この閉包 $[a,b]$ も同相になります。

命題11.3
$\forall r\in {\mathbb Q}$ に対して、$r$ の連結成分 $C(r)$ について
$C(r)=\{r\}$ が成り立ちます。

(証明) $\forall r,s\in {\mathbb Q}$ に対して、
$r<s$ に対して、$r<q<s$ となる無理数 $q$ が存在して、
${\mathbb Q}\cap (-\infty,q)={\mathbb Q}\cap (-\infty,q]$
は開かつ閉集合であるから、${\mathbb Q}\cap (-\infty,q]$ は
連結成分の和集合つまり、$C(r)\subset {\mathbb Q}\cap (-\infty,q]$
であり、
同様に、$C(s)\subset {\mathbb Q}\cap [q,\infty)$
であるから、$C(r)\cap C(s)=\emptyset$ であるから、
$\forall r\in{\mathbb Q}$ の連結成分は $r$ のみとなります。$\Box$

このように、$\forall a\in X$ に対して、$C_X(a)=\{a\}$
であるとき、$X$ は完全不連結であるという。

よって、$({\mathbb Q},\mathcal{O}_{d_1})$ は完全不連結であり、
ゾルゲンフライ直線 $({\mathbb R},\mathcal{O}_{l})$ も完全不連結となります。

また、連結性の最後に中間値の定理を示しました。

定理11.6
位相空間 $X$ と連続関数 $f:X\to {\mathbb R}$ をとる。
$X$ の連結な部分集合 $A$ に対して、
$a,b\in A$ が $f(a)<f(b)$ を満たすとする。
このとき、$f(a)<\forall  c <f(b)$ となる $c$ に対して、
$f(x)=c$ となる $x\in A$ が存在する。

(証明)$A$ は連結なので、$f(A)\subset {\mathbb R}$ も連結であり、
$f(a),f(b)\in f(A)$ が成り立ちます。
よって、このとき、$f(a)<c<f(b)$ が $f(x)=c$ となる $x$ が存在しないとする。
このとき、$B=f(A)\cap (-\infty, c)=f(A)\cap (-\infty ,c]$ より、
$B$ は空でも全体でもない $f(A)$ の開かつ閉集合であるから矛盾する。
よって、$f(x)=c$ となる $x\in A$ が存在する。$\Box$


弧状連結性
弧状連結の定理をしましょう。

定義11.4
位相空間 $X$ が弧状連結であるとは以下を満たすことを意味します。
$\forall a,b\in X$ に対して、ある連続写像 $f:I\to X$ が
存在して、$f(0)=a$ かつ $f(1)=b$ を満たす。

ここで、$I$ は閉区間 $[0,1]$ です。
すぐにわかるのは次の定理です。

定理11.7
弧状連結なら連結である。

(証明)$X$ が弧状連結であるとします。
このとき、$\forall a,b \in X$ に対して、連続写像 $f:I\to X$ が存在して
$f(0)=a$ かつ $f(1)=b$ を満たし、つまり、$a,b\in f(I)\subset X$ を満たします。
$I$ が連結であるから、$f(I)$ も連結になり、$f(I)\subset C(b)$ であるから
$a$ は $b$ の連結成分に属します。
つまり、$a\in C(b)$ であり、つまり $X\subset C(b)$ より
$X=C(b)$ となります。つまり $X$ は連結となります。$\Box$

この定理の逆は一般には成り立ちません。
つまり、連結だが、弧状連結であるものが存在します。

定理11.8
$J=\left\{\left(x,\sin\frac{1}{x}\right)|x\in {\mathbb R}_{>0}\right\}$
とし、
$I=\{(0,t)|-1\le t\le 1\}$
とする。このとき $X=I\cup J$ は連結であるが、弧状連結ではない。

$J$ は下の図のようなグラフになっており、
$I$ はこの $y$ -軸の $[-1,1]$ の区間です。




(証明)連結性について
$J$ は ${\mathbb R}_{>0}$ 上の連続関数 $\sin \frac{1}{x}$ のグラフであり
連続像になります。よって、定理11.2から $J$ は連結。
また、$\forall (0,t)\in I$ に対して、数列 $\left(\frac{1}{2n\pi+\text{arcsin}t},t\right)$
は、$J$ 上の点列であり、$n\to \infty$ において $(0,t)$ に収束するので、
$(0,t)\in \overline{J}$ となります。
これは、$I\cup J\subset \overline{J}$ であることを示しており、
$$I\subset I\cup J\subset \overline{J}$$
から、定理11.4 から $X=I\cup J$ も連結ということになります。

非弧状連結について
$O\in X$ を ${\mathbb R}^2$ の原点とし $A=(\frac{1}{\pi},0)$ がある連続写像
$f:I\to X$ によって $f(0)=O$ かつ $f(1)=A$ とならないことを示します。
もし結べるとすると、連続写像 $f:[0,1]\to X$ が存在して、
$f(0)=O$かつ $f(1)=A$ を満たします。
そうすると、今、$f^{-1}(O)=0$ と仮定しておきます。
このとき、
$B_{d_2}(O,\frac{1}{2})$をとり、
$0\in f^{-1}(B_{d_2}(O,\frac{1}{2}))$ の近傍$[0,\delta)$ が存在して、
$[0,\delta)\subset f^{-1}(B_{d_2}(O,\frac{1}{2}))$を満たします。

ここで、$B$ は下の円の内側になります。



そうすると $f^{-1}(O)=0$ と仮定したことから $\text{pr}_1(f([0,\delta)))=[0,a)$ となる
$a>0$ が存在します。
よって、$\frac{2}{(4n+1)\pi}<a$ を満たす$n$ が存在し、
$(\frac{2}{(4n+1)\pi},1)\in f([0,\delta))\subset B$ を満たします。
しかし、$(\frac{2}{(4n+1)\pi},1)\not\in B$ であるので、
矛盾します。
よって、$X$ は弧状連結ではないということになります。$\Box$ 

途中で、$f^{-1}(O)=0$ と仮定しましたが、
これは簡単に証明できます。$\{t\in I|f(t)=O\}$ となるものの
$\sup$ を $t_0$ を取り、$[t_0,1]$ を $[0,1]$ に線形に引き伸ばしたものを
$f$ に合成したものを再び $f$ とおけば良いです。