Processing math: 100%

2016年8月8日月曜日

線形代数続論演習(第14回)

[場所1E103(金曜日3限)]


HPに行く.

定期試験(7/29)を行い、採点を行いました.線形続論の2本柱は、商空間とジョルダン標準形と思われますので、今回もそれらをメインに作問いたしました.

試験は、全部で5問でしたが、最後の2問は選択問題ですので、実質4問ということになります.しかし、保険でどちらも解いている人もいましたが、基本的に時間は足りなかったようですね.配点は以下のようにしました.

14-1 10点
14-2 10-10-10点
14-3 10-10-10-10点
14-4 20点
14-5 20点

平均点:55.2 点
最高得点:100点
最低得点:5点でした.

得点の上位から下位まで万遍なく存在し、ほぼ6割が平均でした.
ただ、今までできていた人でも75分という時間内で全て解き切るのは難しかったのではないでしょうか?

学生は、理解していない部分が浮き彫りになってよかったのではないかと思います.
教える方でも、学生が理解しにくい、いくつかの部分がわかって今後の私の反省材料
となりそうです.特に商空間の扱いに関して基本的なところからこだわって教えるべきだと思いました.

問題毎の正答率は以下のようです.
4,5の選択問題は、最終的に得点として採用した中での比率ではなく、解答用紙に解いた形跡のある人全員の中での割合です.

問題12345
得点率(%)61.179.837.364.069.0

やはり、14-3の商空間の問題の正答率が悪いです.
明らかに、14-4より14-5の方が易しく作ったはず(単なる平方完成で終わる問題)なのに、そちらを選ばず、標準化を2回使わないといけない14-4を選んだ人の方が1.5倍近く多かったです.両問題の配置を逆にしていたらもう少し得点率が違ったかもしれませんね.


それでは問題の解説をしていきます.

問題-14-1

正規行列の定義とその性質を述べよということですが、答えは、

(定義) 正方行列 AA^\ast A=AA^{\ast} を満たすこと.ただし、A^\astA の転置と複素共役の合成です.
(性質) あるユニタリー行列によって対角化されること.もしくは、同値な条件として固有空間が全体を生成し、各固有空間同士が直交する.

となります.これは、単なる知識問題です.定義ができていても、後半の性質が思い出せなかった人が多かったです.対称行列や、交代行列など十分条件を書いた人は部分点をあげました.

正規行列については授業で定義と性質をわざわざ紹介したので、全員ができると思いましたがそうでもありませんでした.


問題-14-2

ジョルダン標準形の問題は、演習の授業中に何度もやってもらったので、比較的できていたと思います.それでも、ジョルダンブロックを間違えたり、固有空間が 0 ベクトル空間になるなど、ありえない間違いも散見されました.

(解答)
(1) 固有多項式を計算することで、\Phi_A(t)=(t-1)^4 となるので、固有値は、 1 だけとなる.
(2) V_1 を固有空間、V_{(1)} を広義固有空間とすると、
V_1=\text{Ker}(A-E)=\left\{{\bf x}\in{\mathbb R}^4|\begin{pmatrix}1&2&1&0\end{pmatrix}{\bf x}={\bf 0}\right\}

となり、この連立一次方程式を求めると、
V_1=\left\langle\begin{pmatrix} -2\\1\\0\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix} -1\\0\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix} 0\\0\\0\\1\end{pmatrix}\right\rangle

となります.また、

\begin{pmatrix}1&2&1&0\end{pmatrix}(A-E)=O

なので、V_{(1)}=\text{Ker}((A-E)^2)={\mathbb C}^4 となる.


(注:固有値が一つしかない時点で、その広義固有空間は全体と一致します.)

(3) \text{Ker}((A-E)^2)/\text{Ker}(A-E) の基底は、 \text{Ker}(A-E) の補空間の基底をがそのまま誘導されるので、{\bf u}_1=\begin{pmatrix}1\\0\\0\\0\end{pmatrix} とすると、
\text{Ker}((A-E)^2)/\text{Ker}(A-E)=\langle [{\bf u}_1]\rangle となります.

ここで、A-E の左からの掛け算としての単射写像
\varphi:\text{Ker}((A-E)^2)/\text{Ker}(A-E)\to \text{Ker}(A-E)
によって、{\bf u}_2=(A-E){\bf u}_1=\begin{pmatrix}1\\-1\\1\\-1\end{pmatrix} とすると、\text{Im}(\varphi)=\langle [{\bf u}_2]\rangle となり、{\bf u}_2\text{Ker}(A-E) の一次独立なベクトル、つまり、非ゼロベクトルとなる.また、\text{Ker}(A-E)/\text{Im}(\varphi) の基底は、\text{Ker}(A-E){\bf u}_2 の補空間の基底なので、
{\bf v}=\begin{pmatrix}-2\\1\\0\\0\end{pmatrix}, {\bf w}=\begin{pmatrix}-1\\0\\1\\0\end{pmatrix} とすると、

\text{Ker}(A-E)/\text{Im}(\varphi)=\langle [{\bf v}],[{\bf w}]\rangle

となる.これは、これらのベクトルが一次独立であるから
\langle{\bf v},{\bf w},{\bf u}_2\rangle=\text{Ker}(A-E)
と同値だが、
このイコールは、右辺の各ベクトルが、左辺のベクトルの一次結合で書け、左辺の各ベクトルが、右辺の各ベクトルの一次結合で書けることが必要十分だが、実際、非自明な部分だけやると、

\begin{pmatrix}0\\0\\0\\1\end{pmatrix}=-{\bf u}_2-{\bf v}+{\bf w} であり、
{\bf u}_2=-\begin{pmatrix}0\\0\\0\\1\end{pmatrix}-{\bf v}+{\bf w} となるので、
\text{Ker}(A-E)/\text{Im}(\varphi)=\langle [{\bf v}],[{\bf w}]\rangle がわかる.

よって、
P=({\bf u}_2{\bf u}_1{\bf v}{\bf w})
とおくと、

(A-E)P=P\begin{pmatrix}0&1&0&0\\0&0&0&0\\0&0&0&0\\0&0&0&0\end{pmatrix}
がいえ、移項することで、
P^{-1}AP=\begin{pmatrix}1&1&0&0\\0&1&0&0\\0&0&1&0\\0&0&0&1\end{pmatrix}

と標準化される.
よって、ジョルダン基底は、\{{\bf u}_2,{\bf u}_1, {\bf v},{\bf w}\} となる.


問題-14-3

このような商空間の問題は宿題にも出したことがあるので、比較的易しいのでは?と思ったのですが、そうでもなかったようです.同じような商空間は、代数学の授業でも習うと思いますので、その時にまた改めてやることになるでしょうか.

商空間の扱い方(答案や証明の書き方など)をもう少し重点的にやればよかったと思いました.

(解答)
(1)  {\bf v}_1,{\bf v}_2\in f(x)V は、{\bf v}_1=f(x)g_1(x) かつ {\bf v}_2=f(x)g_2(x) と書ける.ここで、g_i(x) はある多項式とする.
このとき、{\bf v}_1+{\bf v}_2=f(x)(g_1(x)+g_2(x)) となり、g_1(x)+g_2(x)\in V であるので、{\bf v}_1+{\bf v}_2\in V となる.

また、\lambda\in {\mathbb R} とすると、
\lambda (f(x)g_1(x))=f(x)(\lambda g_1(x))) となり、\lambda g_1(x)\in V なので、\lambda (f(x)g_1(x))\in V となる.
0\in f(x)V であり、f(x)V は空集合でないので、 f(x)V は、V の部分空間である.

(2) W=V/f(x)V の基底は [1],[x-1],[(x-1)^2] であることを示す.

U=\langle 1,x-1,(x-1)^2\rangle とする.
写像 \pi:V\to W を自然な射影 \pi(s(x))=[s(x)]とし、その U への制限を \hat{\pi}:U\to W とする.

(単射性) h(x)\in U に対して、\hat{\pi}(h(x))=[h(x)]=0 とすると、h(x)=x(x-1)^2g(x) となる g(x)\in V が存在する.

条件から、h(x) は高々 2次以下の多項式だから、g(x)=0 でなければならない.よって、h(x)=0 となる.よって、\hat{\pi} は単射.

(全射性) 任意の [k(x)]\in W をとる.ここで、k(x)\in V である.
今、k(x)=f(x)q(x)+r(x) とする.ここで、q(x)f(x) で割ったときの商であり、r(x) は余りとする.このとき、[k(x)]=[r(x)] となり、r(x) は 2次以下の多項式であり、
r(x)=a_0(x-1)^2+a_1(x-1)+a_2 となる実数 a_0,a_1,a_2 が存在し、

[k(x)]=[r(x)]=[a_0(x-1)^2+a_1(x-1)+a_2]=a_0[(x-1)^2]+a_1[x-1]+a_2[1]=a_0\hat{\pi}((x-1)^2)+a_1\hat{\pi}(x-1)+a_2\hat{\pi}(1)=\hat{\pi}(a_0(x-1)^2+a_1(x-1)+a_0)=\hat{\pi}(r(x))

よって、\hat{\pi} は全射である.

これは \hat{\pi}:U\to W は同型写像であることを意味する.
よって、U の基底の像 [(x-1)^2], [x-1],[1]W において基底となる.

(3) (2) で定めた基底において、p の表現行列を与える.

p([(x-1)^2])=[(x-1)^3]=[x(x-1)^2-(x-1)^2]=-[(x-1)^2]
p([x-1])=[(x-1)^2]
p([1])=[x-1] となり、表現行列は、
(p([(x-1)^2]),p([x-1]),p([1]))=([(x-1)^2],[x-1],[1])\begin{pmatrix}-1&1&0\\0&0&1\\0&0&0\end{pmatrix}
と計算される.

(4) A=\begin{pmatrix}-1&1&0\\0&0&1\\0&0&0\end{pmatrix} とすると、固有値は、0,-1である.
\text{rank}(A)=2 であるから、\dim \text{Ker}(A)=1 となる.固有値 0 の重複度は 2 なので、\dim V_0=\dim \text{Ker}(A)=1 であるので、固有空間の次元が重複度と一致しないので、p は対角化可能でない.


(注:線形写像 p に即した形に基底をとったために、最後の (4) が易しくなりました.このような基底を取った人はいませんでしたが.) 


問題-14-4

A^aB^bC^c=\begin{pmatrix}1&a&ab+c\\0&1&b\\0&0&1\end{pmatrix}
であり、
ABC=\begin{pmatrix}1&1&2\\0&1&1\\0&0&1\end{pmatrix}
であり、a,b が両方 non-zeroであれば、そのジョルダン標準形は同じである.
よって、ジョルダン基底
\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}0\\\frac{1}{a}\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\-\frac{ab+c}{a^2b}\\\frac{1}{ab}\end{pmatrix}
によるA^aB^bC^c の標準化とジョルダン基底
\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\  \begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix},\begin{pmatrix}0\\-2\\1\end{pmatrix}
によるABC の標準化は、両方
\begin{pmatrix}1&1&0\\0&1&1\\0&0&1\end{pmatrix}
となる.
それらを並べてできる行列を それぞれ、Q, R とすると、
Q^{-1}A^aB^bC^cQ=R^{-1}ABCR=\begin{pmatrix}1&1&0\\0&1&1\\0&0&1\end{pmatrix}
となる.よって、P=QR^{-1} とおくと、
P=\left( \begin{array}{ccc}  1 & 0 & 0 \\  0 & \frac{1}{a} & \frac{a b-c}{a^2 b}\\  0 & 0 & \frac{1}{a b} \\ \end{array} \right) が求める P である.

問題-14-5

普通に平方完成をしてもすぐできますが、ここでは、直交行列を使って対角化をします.
まず、2次式を
\begin{pmatrix}x&y&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&-2&1\\-2&1&1\\1&1&3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\\1\end{pmatrix}=0
とし、対称行列 \begin{pmatrix}1&-2\\-2&1\end{pmatrix} の直交行列を用いた対角化を応用して、
 P=\begin{pmatrix}\frac{1}{\sqrt{2}}&-\frac{1}{\sqrt{2}}&0\\\frac1{\sqrt{2}}&\frac1{\sqrt{2}}&0\\0&0&1\end{pmatrix}
とおく.
P^{-1}AP={}^tPAP=\begin{pmatrix}-1&0&\sqrt{2}\\0&3&0\\\sqrt{2}&0&3\end{pmatrix}

となるので、この2次曲線は、-x^2+3y^2+2\sqrt{2}x+3=0 に合同ということになる.
平方完成をして、-(x-\sqrt{2})^2+3y^2+5=0 となり、
x-\sqrt{2}=X とすると、
-X^2+3y^2+5=0 となり、この曲線は双曲線であることがわかる.

0 件のコメント:

コメントを投稿