結び目もしくは、絡み目を見て、あるイソトピー不変量を与えてみます.
結び目は成分数が1 のものをいい、絡み目は複数の成分をもつものをいいます.また、成分数を気にしないときは、どちらも合わせて絡み目ということがあります.
絡み目を適当に平面の上に置きます.置いたものは図式というのでした.例えば、前回の三葉結び目の図式を持ってきましょう.
この図式をみてどんな不変量が取り出せるか?ということですが、ここでは、状態というものを用いて、アレクサンダーコンウェイ多項式という不変量を取り出しましょう.
状態
まず、絡み目に向きを入れておいて、下のような絵を考えます.
図式の上下の交差を無視したものを宇宙とよぶことにします.この用語は下の参考文献に習いました.宇宙に、上のように●と▲の印をつけます.●は隣り合った領域に2つだけおきます.●はどこでもいいですが、最初に決めて固定しておきます.▲は、各交差点に対して一つずつ、その4つの領域のどこか一つおきますが、●のない領域で、全体として、一つの領域に必ず一つの▲をおくというルールを課します.
このような●と▲をおいた絵のことを 状態 と呼ぶことにします.このような状態はこの宇宙にはあと2つあります.
この2つです.これらも状態の条件を満たしていますね.それぞれでてきた順番に$S_1,S_2,S_3$ と
名前を付けることにします.そうすると、$S_1,S_2$ の違いは、宇宙のの中のある線分にそって、上下にある▲を交換してやって得られていることが分かります.また、$S_2,S_3$ も同様です.それらの間の関係を書くと、
結び目は成分数が1 のものをいい、絡み目は複数の成分をもつものをいいます.また、成分数を気にしないときは、どちらも合わせて絡み目ということがあります.
絡み目を適当に平面の上に置きます.置いたものは図式というのでした.例えば、前回の三葉結び目の図式を持ってきましょう.
この図式をみてどんな不変量が取り出せるか?ということですが、ここでは、状態というものを用いて、アレクサンダーコンウェイ多項式という不変量を取り出しましょう.
状態
まず、絡み目に向きを入れておいて、下のような絵を考えます.
このような●と▲をおいた絵のことを 状態 と呼ぶことにします.このような状態はこの宇宙にはあと2つあります.
この2つです.これらも状態の条件を満たしていますね.それぞれでてきた順番に$S_1,S_2,S_3$ と
名前を付けることにします.そうすると、$S_1,S_2$ の違いは、宇宙のの中のある線分にそって、上下にある▲を交換してやって得られていることが分かります.また、$S_2,S_3$ も同様です.それらの間の関係を書くと、
$S_1\leftrightarrow S_2\leftrightarrow S_3$
という関係になります.
この交換をするという操作で、ある宇宙の全ての状態をつなげることができます.つまり、状態をある点とし、交換する操作でその点を結んでやると、一つのグラフ(束)を構成することができるということを意味しています.上の例だと、
となります.
実は、このグラフにはある意味、極大のものと極小のものがただ一つずつ存在します.そのことは興味深い性質を引き出せるのですが、詳しいことは下のKauffman の参考文献に書いてあります.それに関してはここでは書かないことにします.
交差点と状態和
宇宙に結び目の上下の情報を入れてやることで、結び目(絡み目)の不変量を取り出しましょう.上の図式の中で、交差点の上下の仕方によって
この交換をするという操作で、ある宇宙の全ての状態をつなげることができます.つまり、状態をある点とし、交換する操作でその点を結んでやると、一つのグラフ(束)を構成することができるということを意味しています.上の例だと、
となります.
実は、このグラフにはある意味、極大のものと極小のものがただ一つずつ存在します.そのことは興味深い性質を引き出せるのですが、詳しいことは下のKauffman の参考文献に書いてあります.それに関してはここでは書かないことにします.
交差点と状態和
宇宙に結び目の上下の情報を入れてやることで、結び目(絡み目)の不変量を取り出しましょう.上の図式の中で、交差点の上下の仕方によって
のような B, W のラベルを与えておきます.それを K と書くことにします.つまり、
ですが、宇宙にこのように B,W のラベルを書くことは、結び目の図式を書くことに対応しています.ラベルと結び目の向きから上下の交差の様子が復元できるからです.このとき、状態 $S$ に対して、
$$\langle K,S\rangle =\sigma(S)B^{x(S)}W^{y(S)}$$
のような、B, W の単項式を与えます.ここで、$x(S)$ は状態 $S$ における、▲が B を指している数、また、$y(S)$ は $S$ の▲が W を指している数です.また、$\sigma(S)$ は$(-1)^{x(s)}$ とします.また、状態の和をとることで、
$$\langle K\rangle =\sum_{S\in{\mathcal S}}\langle K,S\rangle $$
のような B, W の多項式を定義します.正確には、整数係数の多項式 ${\Bbb Z}[W,B]$ の元です.${\mathcal S}$ は状態全体の集合です.このとき、$\langle K\rangle$ は、実は上の●の取り方に依らない多項式になっています.この多項式は、もう少し面白い性質(結び目の局所変形に関するスケイン関係式)を持っていますが、またの機会に説明します.
このとき、$\langle K\rangle$ は結び目(絡み目)のイソトピー不変量にはなっていません.実際、結び目をイソトピーで動かすと、違う量になってしまうことがあります.
ようやく不変量になった!
そこで、$\langle K,S\rangle$ に $W=1/B$ を代入してやります、代数的には、${\Bbb Z}[W,B]/(BW=1)$ をしたことになります.このとき、この制限で得られた多項式は、実は、$W-B$ の多項式になっています.
$z=W-B$ と置いてやると、$\langle K\rangle$ は$z$ の整数係数多項式になります.
この多項式のことを Alexander-Conway 多項式 (アレクサンダー-コンウェイ多項式)と言います.
記号では $\nabla_K(z)$ とかきます.この多項式は結び目のイソトピー不変量となっているのです.
定理
アレクサンダーコンウェイ多項式 $\nabla_K(z)$ は絡み目(または結び目)のイソトピー不変量である.
もちろんこの定理は明らかではありませんので証明が必要です.証明が知りたければ、やはり、下のKaufman の著書を見るか、結び目の標準的な教科書には載っています.
例
たとえば上の結び目の場合は、
$\langle K,S_1\rangle=W^2$
$\langle K,S_2\rangle=-BW$
$\langle K,S_3\rangle=B^2$
となるので、$\langle K\rangle=W^2-BW+B^2$ となります.そこで、 $W=1/B$ としてやると、
$W^2+W^{-2}-1$ となり、$z$ の多項式で書くと、$1+z^2$ となります.この多項式は三葉結び目のアレクサンダーコンウェイ多項式です.つまり
$$\nabla_{\text{三葉結び目}}(z)=1+z^2$$
といえます.ロルフセンの記号法を用いれば、
$$\nabla_{3_1}(z)=1+z^2$$
となります.
演習問題
下の結び目のアレクサンダーコンウェイ多項式を計算せよ.
他にも、多くの結び目がこのページ(ロルフセンテーブル)にも載っていますので、不変量を計算し、いろいろと実験してみると、何かおもしろいことがわかるかもしれません.
- Louis, H. Kauffman, Remarks on Formal Knot Theory, http://homepages.math.uic.edu/~kauffman/FKT.pdf
- The Rolfsen knot Table, http://katlas.math.toronto.edu/wiki/The_Rolfsen_Knot_Table