先週の手習い塾で学生が言っていたこと.
べき乗和を
$\sigma_m(n)=\sum_{k=1}^nk^m$ とおきます。
このとき、べき乗和の公式は高校数学でもよく知られている.
$\sigma_1(n)=\frac{1}{2}n(n+1)$
$\sigma_2(n)=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$
$\sigma_3(n)=\frac{1}{4}n^2(1+n)^2$
ですが、一般に、ベルヌイ数 $B_j$ を用いて、
$\sigma_m(n)=\frac{1}{m+1}\sum_{j=0}^m\binom{m+1}{j}B_jn^{m+1-j}$ (Faulhaber's formula)
となることも知られています.
さらに、wikipediaを調べてみれば、べき乗和 $\sigma_m(n)$の形に関する
ファウルハーバーの面白い定理があります。
$\sigma_m(n)$は $m$ が奇数のときは $\sigma_1(n)$ の多項式になり、
$\sigma_m(n)$は $m$ が偶数の時は $\sigma_2(m)$ で割り切れ、その商は $\sigma_1(m)$ の多項式になる.
ところで、ファウルハーバーは17世紀のドイツの数学者(5 May 1580 – 10 September 1635)で、
この時代にべき乗和を17次まで公式を与えるなど膨大な計算をしていたようです。
同年代では、フェルマー(フランス17 August, 1601 or 1607 – 12 January 1665)がいますが、
もしかしたら2人は交流があったかもしれません。
手習い塾で話していたことは以下のような話です。
$\sigma^2_m(n)=\sum_{k=1}^n\sigma_m(k)$
$\sigma^p_m(n)=\sum_{k=1}^n\sigma^{p-1}_m(k)$ とおきます。
このとき、$\sigma_m^p(n)$ がどのような多項式になるかということが問題ですが、
整数論などではおそらくこのような研究はよくされているようです。
mathematicaなどで計算させてみると、
$\sigma_1^p(n)=\frac{1}{(p+1)!}\prod_{l=0}^{p}(n+l)$
となることがわかります.
つまり、
$\sigma_1^1(n)=\frac{1}{2!}n(n+1)$
$\sigma_1^2(n)=\frac{1}{3!}n(n+1)(n+2)$
$\sigma_1^3(n)=\frac{1}{4!}n(n+1)(n+2)(n+3)$
$\cdots$
となります。つまり、$\sigma_1^m(n)=\binom{m+n}{m+1}$ ですね。
(証明はどうやるのか知りませんが)
他の場合も調べると、
$\sigma_m^p(n)$ は$\sigma_1^p(n)$ で割り切れそうです.
つまり、
$\frac{\sigma_m^p(n)}{\sigma_1^p(n)}$ は多項式のようですが、
どのように書けるでしょうか?
$m=3$ の場合にやってみると、
$\sigma_1^3(n)=1\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_2^3(n)=\frac{1}{5}(2n+3)\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_3^3(n)=\frac{1}{5}(n^2+3n+1)\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_4^3(n)=\frac{1}{35}(2n+3)(2n^2+6n-1)\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_5^3(n)=\frac{1}{14}(n^2+2n-1)(n^2+4n+2)\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_6^3(n)=\frac{1}{210}(2n+3)(5n^4+30n^3+35n^2-30n+2)\times \sigma_1^3(n)$
ところで、上記の
Faulhaber( http://en.wikipedia.org/wiki/Johann_Faulhaber)は、
$\sigma^p_{2m}(n)$ は($N_p:=(n^2+pn)/2$の多項式)$\times \sigma^p_2(n)$ の形をしており、
$\sigma^p_{2m+1}(n)$ は($N_p$の多項式)$\times \sigma^p_1(n)$ の形をしている
のような驚くべき結果を証明しています。
私は詳細は知りませんが下の参考文献(5)にそのシンプルで自然な方法が
詳しく書いてあります。
べき乗和に関しては現代まで多くの研究がされており、
ネットでも探して見ると面白い結果が見つかるのではないでしょうか。
現代のファウルハーバーになるべく、mathematicaでいろいろと実験して探索していけば、
新しい公式が生まれるかもしれませんね。
[参考文献]
べき乗和を
$\sigma_m(n)=\sum_{k=1}^nk^m$ とおきます。
このとき、べき乗和の公式は高校数学でもよく知られている.
$\sigma_1(n)=\frac{1}{2}n(n+1)$
$\sigma_2(n)=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$
$\sigma_3(n)=\frac{1}{4}n^2(1+n)^2$
ですが、一般に、ベルヌイ数 $B_j$ を用いて、
$\sigma_m(n)=\frac{1}{m+1}\sum_{j=0}^m\binom{m+1}{j}B_jn^{m+1-j}$ (Faulhaber's formula)
となることも知られています.
さらに、wikipediaを調べてみれば、べき乗和 $\sigma_m(n)$の形に関する
ファウルハーバーの面白い定理があります。
$\sigma_m(n)$は $m$ が奇数のときは $\sigma_1(n)$ の多項式になり、
$\sigma_m(n)$は $m$ が偶数の時は $\sigma_2(m)$ で割り切れ、その商は $\sigma_1(m)$ の多項式になる.
ところで、ファウルハーバーは17世紀のドイツの数学者(5 May 1580 – 10 September 1635)で、
この時代にべき乗和を17次まで公式を与えるなど膨大な計算をしていたようです。
同年代では、フェルマー(フランス17 August, 1601 or 1607 – 12 January 1665)がいますが、
もしかしたら2人は交流があったかもしれません。
手習い塾で話していたことは以下のような話です。
$\sigma^2_m(n)=\sum_{k=1}^n\sigma_m(k)$
$\sigma^p_m(n)=\sum_{k=1}^n\sigma^{p-1}_m(k)$ とおきます。
このとき、$\sigma_m^p(n)$ がどのような多項式になるかということが問題ですが、
整数論などではおそらくこのような研究はよくされているようです。
mathematicaなどで計算させてみると、
$\sigma_1^p(n)=\frac{1}{(p+1)!}\prod_{l=0}^{p}(n+l)$
となることがわかります.
つまり、
$\sigma_1^1(n)=\frac{1}{2!}n(n+1)$
$\sigma_1^2(n)=\frac{1}{3!}n(n+1)(n+2)$
$\sigma_1^3(n)=\frac{1}{4!}n(n+1)(n+2)(n+3)$
$\cdots$
となります。つまり、$\sigma_1^m(n)=\binom{m+n}{m+1}$ ですね。
(証明はどうやるのか知りませんが)
他の場合も調べると、
$\sigma_m^p(n)$ は$\sigma_1^p(n)$ で割り切れそうです.
つまり、
$\frac{\sigma_m^p(n)}{\sigma_1^p(n)}$ は多項式のようですが、
どのように書けるでしょうか?
$m=3$ の場合にやってみると、
$\sigma_1^3(n)=1\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_2^3(n)=\frac{1}{5}(2n+3)\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_3^3(n)=\frac{1}{5}(n^2+3n+1)\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_4^3(n)=\frac{1}{35}(2n+3)(2n^2+6n-1)\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_5^3(n)=\frac{1}{14}(n^2+2n-1)(n^2+4n+2)\times \sigma_1^3(n)$
$\sigma_6^3(n)=\frac{1}{210}(2n+3)(5n^4+30n^3+35n^2-30n+2)\times \sigma_1^3(n)$
ところで、上記の
Faulhaber( http://en.wikipedia.org/wiki/Johann_Faulhaber)は、
$\sigma^p_{2m}(n)$ は($N_p:=(n^2+pn)/2$の多項式)$\times \sigma^p_2(n)$ の形をしており、
$\sigma^p_{2m+1}(n)$ は($N_p$の多項式)$\times \sigma^p_1(n)$ の形をしている
のような驚くべき結果を証明しています。
私は詳細は知りませんが下の参考文献(5)にそのシンプルで自然な方法が
詳しく書いてあります。
べき乗和に関しては現代まで多くの研究がされており、
ネットでも探して見ると面白い結果が見つかるのではないでしょうか。
現代のファウルハーバーになるべく、mathematicaでいろいろと実験して探索していけば、
新しい公式が生まれるかもしれませんね。
[参考文献]
- J. Faulhaber, Academia Algebrae - Darinnen die miraculosische Inventiones zu den höchsten Cossen weiters continuirt und profitiert werden. A very rare book, but Knuth has placed a photocopy in the Stanford library, call number QA154.8 F3 1631a f MATH
- Donald E. Knuth, Johann Faulhaber and Sums of Powers,
- A.F.Beardon, Sum of power of Integers, Amer. Math. Monthly 103 (1996), no. 3, 201–213.
- Edwards, A. W. F. A quick route to sums of powers. Amer. Math. Monthly 93 (1986), no. 6, 451–455
- Knuth Donald, Johann Faulhaber and sums of powers. Math. Comp. 61 (1993), no. 203, 277–294.
上の$\sigma^p_1(n)$ の式の証明は簡単でした。
返信削除$(p+1)k(k+1)(k+2)\cdots(k+p-1)=k(k+1)(k+2)\cdots(k+p)-(k-1)k(k+1)\cdots(k+p-1)$
となりますから、これを1からnまで和をとれば、
$(p+1)\sum_{k=1}^np!\sigma^{p-1}_1(k)=n(n+1)(n+2)\cdots(n+p)$
となります。
ゆえに、$\sigma^p_1(n)=\frac{1}{(p+1)!}n(n+1)\cdots(n+p)$
となることが帰納的にわかりますね。