[場所1E503(月曜日5限)]
今回は、線形代数の続き、MatousekのMiniature 5を少しと9をやりました。
線形代数
問題は、以下の同値関係を示せというものです。
A を正方行列とする。
A が正則である\Leftrightarrow 連立一次方程式 A{\bf v}={\bf 0} は、{\bf v}={\bf 0} 以外解を持たない
A を正方行列とする。
A が正則である\Leftrightarrow 連立一次方程式 A{\bf v}={\bf 0} は、{\bf v}={\bf 0} 以外解を持たない
A が正則であるとは、逆行列をもつということとします。
(解)
(\Rightarrow)
A が逆行列をもつとします。
{\bf v}\in {\mathbb C}^n が A{\bf v}={\bf 0} を満たすとき、
A^{-1} を両辺にかけることで、{\bf v}=A^{-1}A{\bf v}=A^{-1}{\bf 0}={\bf 0} となります。よって{\bf v}={\bf 0} が成り立つので、
A{\bf v}={\bf 0} には非自明な解以外持たないことがわかります。
(\Leftarrow)
行列 A をA=({\bf a}_1{\bf a}_2\cdots {\bf a}_n) と縦ベクトルとして書くとき、
同値関係の右の条件は、{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n が一次独立であること
と同値です。
なぜなら、{\bf v}^T=(c_1,c_2\cdots, c_n) と仮定します。
A{\bf v}=c_1{\bf a}_1+c_2{\bf a}_2+\cdots +c_n{\bf a}_n={\bf 0} とすると
この (c_1,c_2,\cdots, c_n) の解が (0,0,\cdots, 0) しかないことは、
{\bf a}_1,\cdots,{\bf a}_n が一次独立であることと同値であるからです。
{\bf a}_1,{\bf a}_2\cdots, {\bf a}_n が一次独立とします。
このとき、以下の行の基本変形をすることで行列を簡約化します。
A\to A_1 \to A_2\to \cdots \to B
をそのような列とします。Bをその簡約行列とします。
とくに、B は階段行列です。
B の i 行目は、
(0,\cdots, 0,1,\ast,\cdots, \ast)
のような形にしており、最初の 0 の数は、 i が増えるに従って単調増加します。
また、1 のある列を、B の先頭列といいます。
先頭列は、必ず数ベクトル空間の標準基底となっています。
つまり、B の縦ベクトルのいくつかは、標準基底となっています。
それ以外の列があれば、その列はその標準基底の一次結合によって
書くことができます。
A の全ての縦ベクトルは一次独立なので、B の縦ベクトルも一次独立です。
よって、B の全ての縦ベクトルは全て先頭列、つまり標準基底出なければならない
(つまり B には、先頭列以外のベクトルは存在しない。)
ので、B は単位行列 E というなります。
行の基本変形は左から正則行列を掛けることに対応するので、
ある正則行列 G が存在して、
GA=B=E
となります。よって、A には、逆行列 G が存在するので、
A は正則行列ということになります。
A には、左逆行列が存在するので、A=G^{-1}E=G^{-1}
となり、AG=G^{-1}G=E となり、右逆行列も存在し、
G=A^{-1} とおけば、
A^{-1}A=AA^{-1}=E となり、A は正則行列ということになります。\Box
以下が成り立つことになります。
n\times n 行列 A が正則でないとすると、
{\bf 0}\neq {\bf v}\in {\mathbb R}^n が存在して、
A{\bf v}={\bf 0} となる。
Miniature 5
ですが、まだあまり理解していなかったようですので来週となりました。「
Miniature 9
ですが、こちら(←リンク)に先週Equiangular linesの定義とその定理について記述したので、
今回はその証明ということになります。
定理
{\mathbb R}^d に存在する等角直線族は、高々 \binom{d+1}{2} 本
であり、d=3 の場合は、その最大 6 をとることができる。
後半の主張は、正20面体を取ればよいですから、
示すべきなのは、前半の主張です。
証明、
{\bf v}_i (i=1,2,\cdots, m) をその等角直線を表す単位ベクトルとする。
このとき、i\neq j であり、|\langle {\bf v}_i,{\bf v}_j\rangle|=\cos\theta となります。
ここで、{\bf v}_i は縦ベクトルです。
S_i={\bf v}_i\cdot {\bf v}_i^T は d\times d のサイズの対称行列となります。
この行列 S_1,S_2,\cdots, S_m は、M(d,{\mathbb R}) の対称行列全体の
なすベクトル空間の中で、一次独立であることが分かれば、
m\le \binom{d+1}{2} となります。ここで、\binom{d+1}{2} は
対称行列全体のなすベクトル空間の次元です。
よって、S_1,\cdots, S_m が一次独立を示せばよいことになります。
a_1S_1+\cdots+a_mS_m=O とします。
ここで、O は零行列です。このとき、
\sum_{i=1}^ma_i{\bf v}_j^T{\bf v}_i{\bf v}_i^T{\bf v}_j=\sum_{i=1}^ma_i\langle {\bf v}_i,{\bf v}_j\rangle^2=a_j+\sum_{i\neq j}a_i\cos^2\theta
となります。
ここで、M を m\times m として、その i 行は、
\begin{pmatrix}\cos^2\theta&\cdots &\cos^2\theta&1 &\cos^2\theta&\cdots &\cos^2\theta\end{pmatrix}
とし、1 は、i 番目の成分とする。このとき、
M=(1-\cos^2\theta)I_n+\cos^2\theta J_n となります。
J_n は成分全て 1 の行列とします。
この行列 M が正定値であることを示します。
{\bf x} を {\bf x}\neq {\bf 0} なる {\bf x}\in {\mathbb R}^m とし、
{\bf x}^T=(x_1,x_2,\cdots, x_m) とします。
{\bf x}^TM{\bf x}=(1-\cos^2\theta)||{\bf x}||^2+\cos^2\theta{\bf x}^TJ_n{\bf x}
=(1-\cos^2\theta)||{\bf x}||^2+\cos^2\theta(x_1+x_2\cdots+x_m)^2> 0
となります。よって、M は正定値の行列となります。
正定値行列は正則でるので、Mは正則となります。よって、
M\begin{pmatrix}a_1\\\vdots\\a_m\end{pmatrix}={\bf 0}
なら、a_1=a_2=\cdots =a_m=0 となります。
よって、S_1,S_2,\cdots, S_m は一次独立であるので、m\le\binom{d+1}{2}
が成り立つ。\Box
この等角直線の問題は、ある m 本の等角直線族が構成できれば、
そこから1本抜けば、m-1 本の等角直線族が構成できるのは言うまでもないので、
重要なのは、それが最大何本取れるかということです。
v(d) を d 次元のユークリッド空間上の等角直線の最大個数とします。
座標軸を取ったときは、全て直角な等角直線ですので、
明らかな不等式、d\le v(d) があります。
v(d) が最低何本取れるか?最高何本取れるか?
に興味があります。
このとき、いつでも \v(d)=\binom{d+1}{2} 取れるというわけではなく、
例えば、
v(2)=3 かつ、v(3)=6 であることはすぐに分かりますが、
v(4)=6 (Haantjes) や
v(5)=10, v(6)=16 (Van Lint and Seidel)
v の値は、順に、
1,3,6,6,10,16,28,28,28,28,28,28,28,\cdots
Wikipediaには、7次元の \binom{7+1}{2}=28 個の
等角直線族の作り方が描いてありました。
{\mathbb R}^8 上で、
(-3,-3,1,1,1,1,1,1) と、それらを入れ替えた28個のベクトルを用意すると、
それらの内積は、\pm8 となるので、等角直線族となる。
また、それらは全て、(1,1,1,1,1,1,1,1) と直交するので、
そのベクトル空間の中で、この28個は最大の等角直線族となる。
これらのベクトルは、7次元の中の 3_{21} と呼ばれる多胞体(多面体の高次元版)
の頂点(頂点は56個あり、原点を通る直線は、その半分の28本)に位置しており、
その対称変換群が E_7 で分類されるコクセター群になります。
など、次元によって v(d) は異なり、構成も難しいです。
しかし、自分なりのベクトルをとって数値実験をしてみたり、
有限幾何と絡めて見たりと、研究してみると面白いかもしれませんね。
参考文献の[L-S]には、今回の不等式が載っていますが、
著者2人がGerzonとprivate communication
をしたとなっており、Gerzonの不等式としています。
[L-S]に証明されている定理として、
定理[L-S(Theorem 3.5)]
v(r)\le r(r+1)/2 が成り立つ。また等式が成り立つなら、r+2は
4,5となるか、ある1より大きい奇数の2乗となる。
があります。
上の7次元の例は、7+2=3^2 となっているので、丁度、この
定理を満たす十分条件にもなっています。
参考文献
- [L-S] P. W. H. Lemmens and J. J. Seidel, Equiangular Lines, Journal of Algebra, vol 24, (1973), 494-512
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