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数学リテラシー2が始まりました。
実数直線の部分集合
今回は 実数直線上の部分集合 と数列の収束の定義について行いました。
実数全体のことは ${\mathbb R}$ と書き表します。
また、有理数全体のことは ${\mathbb Q}$ と書き表します。
まず実数上の部分集合について考えます。
まずは部分集合として区間というものを定義しておきましょう
例1.3.1
$\{x\in {\mathbb R}|a<x<b\}$ を開区間といい、$(a,b)$ と書き
$\{x\in {\mathbb R}|a\le x\le b\}$ を閉区間といい、$[a,b]$ と書き
そして半開区間として
$\{x\in {\mathbb R}|a\le x<b\}$
$\{x\in {\mathbb R}|a<x\le b\}$
をそれぞれ $[a,b)$ と $(a,b]$ と表します。
これらの記号を使っていきましょう。
また、この記号は $a,b$ が $-\infty$
や $\infty$ であっても定義可能です。
ただし、$\pm\infty$ は実数ではないので、$(-\infty, 2]$ のように使いますが、$[-\infty,2]$ のようにはならないので注意してください。
次に実数の部分集合 $A$ が有界であるということについて定義して行きたいと思います
定義1.3.1
$A$ を ${\mathbb R}$
の部分集合とします。実数 $M$ に対して任意の実数 $a\in
A$ に対して $a\le M$ が成り立つとき $A$ は上に有界といい、このような $M$ のことを $A$ の上界と言います。次に実数 $m$ に対してある $a\in A$ に対して $m\le a$ が成り立つとき $A$ は下に有界といい、このような $m$ のことを $A$ の下界と言います。
集合 $A$ が上に有界かつ下に有界のとき $A$ は有界と言います。
つまり $A$ が有界のとき上界と下界存在するので ある実数の有限の部分に収まっている部分集合と言うこともできます。集合の言葉で書けば、ある実数 $m,M$ が存在して
$$A\subset \{x|m<x<M\}$$
ということができます。もちろん十分大きい実数 $K$ を取れば、
$$A\subset \{x|-K<x<K\}$$
とすることもできます。
例1.3.2
(1) $A=(-\infty,2]$ は上に有界だが、下に有界ではない。
(2) $A=\{x\in {\mathbb Q}|-2<x<3\}$ は有界な部分集合である。
(2) の部分集合は $-2$ から $3$ までの有理数ではない数は全て入っていませんので${\mathbb R}$ の区間ではありませんが ${\mathbb R}$ の部分集合にはなっています。
次に、
${\mathbb R}$ の部分集合 $A$ に対して $A$ の上界全体を $U(A)$ とかき、
${\mathbb R}$ の部分集合 $A$ に対して $A$ の下界全体を $L(A)$ とかきます。
この時、$U(A)\neq\emptyset$ であることは $A$ が上に有界であること同値であり、 $L(A)\neq \emptyset$ であることは $A$ が下に有界であることと同値になります。
ここで実数の連続性公理について説明します。
実数の連続性公理
$A$ が実数の部分集合として $U(A)\neq \emptyset$ ならば、つまり $A$ が上に有界であるならば $U(A)$ は最小値を持つ。また、もし $L(A)\neq \emptyset$ なら $L(A)$ は最大値を持つ。このことを実数の連続性公理という。
このことは実数の性質、もしくは実数を定義づける性質の1つになるのですが、性質として認めておくことにします。有理数はもちろん実数とは違いますが、連続性公理の観点からもそれとは異なることを最後に説明します。
例えばこの性質を使うことで どのような実数の性質が導かれるか見てみましょう。例えば $\sqrt{2}$ に近づくような数列 $1,1.4,1.41,\cdots$ を取ります
この時 $A$ を下のように取ります。
$$A=\{1, 1.4, 1.41, 1.414, \cdots\}$$
のようにとります。
この集合 $A$ に対して $2$ が上界となるので上に有界、つまり 実数の連続性公理の最初の仮定を満たします。ですのでこの集合 $A$ に対して $U(A)$ は最小値を持ち、その最小値は実際に $\sqrt{2}$ になります。
上の「最小値を持つ」について説明します。
例えば集合 $(0,1)$ を考えてみます。
この時、この集合の最大値をもちません。
しかし、集合 $(0,1]$ を考えた場合、この集合には最大値をもち $1$ となります。
大事なことは、最大値というのは。その集合に含まれていないといけないということです。
最小値についても同じことです。
最大値を持つというのは、最大値が存在する、と言うこともあります。
$A$ の最大値のことを $\max A$ と書き、$A$ の最小値を $\min A$ と書きます。
上限・下限
ここで上限と下限について定義をしましょう。
$A$ が空集合でなく、 $U(A)$ が空集合でないとき、$U(A)$ の最小値(つまり $\min U(A)$ )は連続性公理から必ず存在し、その最小値のことを $A$ の上限と言います。それを $\sup A$ と書きます。
$A$ が空集合でなく、 $L(A)$ が空集合でないとき、$L(A)$ の最大値(つまり $\max L(A)$ )は連続性公理から必ず存在し、その最大値のことを $A$ の下限と言います。それを $\inf A$ と書きます。
$U(A)$ が存在しなければ、$\sup A=\infty$ と書いたり、$L(A)$ が存在しない場合、$\inf A=-\infty$ と書くことがあります。
例
$\max(0,1)$ は最大値はありませんでしたが、$\sup(0,1)$ は存在して $1$ となります。なぜなら、$U((0,1))=[1,\infty)$ であるから、$\sup (0,1)=\min([1,\infty))=1$ となるからです。
つまり、集合が上に有界ではない状況で最大がない場合は $\sup$ も $\max$ も同じ意味で最大が存在しないか、$\infty$ になるかとなります。
しかし、上に有界であるとき、最大値が存在しない場合でもその最大に当たる値が上限として定義されているということになります。
それで上のような、上界の最小値というややこしい定義になってると言ってもよいかもしれません。
下限についても同じです。
また、$U([0,1])=[1,\infty)$ でもあるから、やはりこのときでも、
$\sup[0,1]=1$ であり、最大値が存在するなら、上限はその最大値と一致します。
補題1.3.1
$A\subset{\mathbb R}$ とし、$A\neq \emptyset$ とする。$\sup A=\alpha$ なら
任意の $\epsilon >0$ に対して、 ある $a\in A$ が存在して、$\alpha-\epsilon<a$ が成り立つ。
(証明) 任意の $\epsilon>0$ に対して、$\alpha-\epsilon$ は $A$ の上界ではありません。なぜなら $\alpha$ が上界の最小値だからです。よって、$\alpha-\epsilon$ は上界の条件を満たさないことになります。$x$ が上界であるとは、任意の $a\in A$ に対して、$a\le x$ ですから、このことを否定することで、ある $a\in A$ が存在して、$\alpha-\epsilon<a$ を満たすことになります。
$\Box$
${\mathbb Q}$ は連続性公理を満たさないこと
上で ${\mathbb R}$ は連続性公理を満たさないと言いましたが、そうではない性質を持つ集合もあるので書いておきます。
それで上に書いた有理数 ${\mathbb Q}$ は連続性公理を満たしません。
先ほどの例を用います。
$$A=\{1, 1.4, 1.41, 1.414, \cdots\}$$
とします。このとき、もし ${\mathbb Q}$ が連続性公理を満たすなら、この $A$ は上に有界であるから上限が存在することになってしまいます。
しかし、 $\sqrt{2}\not\in {\mathbb Q}$ ですから、これは矛盾するわけです。
$\sqrt{2}$ が有理数ではない証明は省略します。
よって、${\mathbb Q}$ は連続性公理を満たさないということになります。
よって、連続性公理とは、実数のように途中に穴が開いていないびっしりと数が詰まっていることを表しています。