現代の代数学(大学での)の初歩としてガロア理論があります。
この理論はどのようにして生まれたのか、
ガロア理論の動機に至るまでを説明してみます.
代数方程式(高校生でも知っている2次方程式や3次方程式など)
の解の形は一体どのようなものなのだろうか?
という自然な問いに対する話です.
以下、方程式の係数は有理数もしくは実数としておきます.
1次方程式の場合
まず、$x$ を変数として、$a$ はゼロではない有理数とし、$b$ を有理数としたとき、
$$ax+b=0$$
を1次方程式といいますが、求める $x$ は、$x=-\frac{b}{a}$ です.
大事なことは、この答えの形 $-\frac{b}{a}$ は、係数 $a,b$ の加減乗除だけを
使って得られているということです.
加法がないと思われるかもしれませんが、上のようなすっきりした形でなくても、
$ax+b=c$ を考えれば、解は $x=\frac{c-b}{a}$ のように、加法も入ります.
これはさほど重要なことではありませんが...
気になる問題が何かというと、方程式が与えられたときに、
その答えは方程式(の係数)からどのように構成されるかということです.
つまり、方程式の係数を決めれば、その係数の組み合わせから、その答え $x$ があるはずです.
どのような範囲の数を見ておけばその方程式の答え(解)が見つかるのか
ともいえます.
1次方程式の場合はその答えは、加減乗除ということなのです.
1次方程式の係数が有理数であれば、解の形は有理数の加減乗除なので
解は再び有理数ということになります.
有理数の加減乗除はまた有理数になることを、有理数は加減乗除で閉じているといいます.
一般に加減乗除で閉じているような数の集合を体といいます.
正確な体の定義はwikipediaでも見てくてださい.
つまり、体とは、加減乗除だけで得られる数の範囲ということになります.
もちろん加減乗除をする回数は有限回です.
たとえば、実数全体や複素数全体も加減乗除で閉じていますので、体の一例です.
わかったことは下の定理です.
定理
ある体上の1次方程式の解はその体上に必ず見つかる.
つまり、有理数を係数とする1次方程式の解は必ず有理数であるし、
実数を係数とする1次方程式の解は必ず実数です.
2次方程式の場合
次に、$a,b,c$ を有理数として、
$$ax^2+bx+c=0$$
を考えます.$a\neq 0$ となるとき、この方程式を2次方程式といい、その解は、
$$x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$$
として知られています.高校の教科書にあるような式変形で簡単に得られます.
この形をよく見てみると、加減乗除以外にルートという操作が入っています.
ルートを取るという操作は、体では一般に閉じません.
たとえば、2 は有理数ですが、そのルート $\sqrt{2}$ は有理数ではありません.
つまり、2次方程式の解を探そうとすると、元の体上には(一般には)存在しない
ということになるのです.
特に、
定理
(一般の)2次方程式は、係数の加減乗除だけでは解を構成することはできない.
しかし、加減乗除とルートをとる操作を含めれば解を構成することができる.
一般の、とつけたのは、すべての2次方程式が加減乗除だけでは構成できないわけ
ではないからです.
2次方程式でも、加減乗除だけでできるものあれば、そうでないものもあります.
たとえば、$x^2-(a+1)x+a=0$ という2次方程式は、$x=1,a$ が解ですので、
係数の加減乗除から作ることができます.
この定理の証明は、さきほどの例 $x^2-2=0$ を持ってきて、$\sqrt{2}$ が有理数ではないという
ことさえ認めれば、有理数の加減乗除ではせいぜい有理数しか生まれない
(加減乗除で閉じている)ので、定理が成り立つことになります.
後半部分は解の公式の存在がそれを表しています.
まとめると、2次方程式は、係数の加減乗除の他にルートをとる操作を加えれば
得ることができます.
ルートをとる操作は普通、体の中で閉じていないので、
解は係数体を拡大した他の体の中に構成されます.
3次方程式の場合
同じように $a\neq 0$ として、$a,b,c,d$ を有理数として、3次方程式
$$ax^3+bx^2+cx+d=0$$
を考えます.
この方程式の解を見つけなさいという問題は、ある年代の人類を悩ませてきました.
初めて一般解法に到達したタルターリアは16世紀の人で、2次方程式の
解の公式を知っていたというフワーリズミーは8~9世紀の人とすると、
かれこれ700年から800年ほど3次方程式の解に到達できないでいたのです.
かの有名なフェルマーの最終定理は350年間解けなかったわけだから、
それの倍以上の年月がかかったということになります.
その当時の数学者人口と今とを比べれば、この比較は全く意味は成しませんが...
元に戻ります.
まず、3次方程式の係数の加減乗除だけではその解までは到達できません.
(3次方程式の中に2次方程式が入っている.)
では、ルート(2乗根)をとる操作を含めれば解を構成することができるのか?
詳しくは書きませんが、結果は、加減乗除と、2乗根、3乗根をとる操作も含めれば、
解が構成できるということでした.
3乗根をとるとは、$X\to \sqrt[3]{X}$ なる操作です.
ただし、そのためには複素数という数を正しく理解する必要はありますが.
定理
(一般の)3次方程式は加減乗除とルート、3乗根をとる操作を繰り返せば
得ることができる.
一般に、加減乗除と2乗根をとる操作だけでは解に到達できない.
同じころ、フェッラーリによって、
定理
(一般の)4次方程式は加減乗除と2乗根、3乗根、4乗根をとる操作を繰り返せば
得ることができる.
一般に、加減乗除と2乗根、3乗根だけでは解に到達できない.
5次方程式の場合
一般の5次方程式は、
$$ax^5+bx^4+cx^3+dx^2+ex+f=0$$
です.($a\neq 0$)
自然な問いとして、一般の5次方程式は
加減乗除と $n$ 乗根をとる操作だけで方程式の解を得ることができるか?
となります.
$n$乗根を取る操作のことを、一般にべき根を取る操作といいます.
この問いに対する答えはこうです.
定理
$n$ を $n\ge5$ なる任意の整数とするとき、(一般の)$n$次方程式の解 $x$ は
加減乗除と べき根をとる操作だけでは得られない.
つまり、1次から2次に進むときに、解を構成するための操作として加減乗除の他に
ルートを取るという新しい操作を加えたのと同じように、
4次から5次に進むときにも、解を構成するためには
何かギャップがあることになります.
つまり、5次方程式の解を構成するのには、加減乗除やべき根をとる操作だけでは
本質的に足らないのです.
そこにギャップがあると初めて証明したのは、19世紀初頭のアーベルです.
そして、その何かを明確に突き止めたのがガロアです.
アーベルとガロアは大体同年代を生きた数学者です.
アーベルがした仕事は、$n$ を5以上とすると、一般の $n$ 次方程式の解は加減乗除と
べき根をとる操作だけでは得られないということですが
方程式によっては、加減乗除とべき根だけで解けるものもあるのです。
たとえば、$x^n-2=0$ はべき根だけで構成できます.
その差が何によるものか、アーベル自身も知りたいと思っていましたが、27歳の
若さで病死してしまいます.
ガロアは、方程式に付随するガロア群(今ではこう呼ばれている)のある性質
を見ることによって、その方程式が、いつ加減乗除とべき根をとる操作だけで解くことが
できるのかということを証明しました.
簡単に言えば、方程式に付随するガロア群とは、ある方程式の解全体を置換する
ある置換群(シンメトリー)のことです.
そのようなシンメトリーが、方程式が加減乗除とべき根で解けるかどうかの情報を
含んでいるというのは、通常な人間の生活の中では全く認識されませんから、
この発見は、ガロアの深い洞察の元なされたということに他なりません.
ちなみに、群というのは数学の用語で、数学概念として初めて登場させたのは、
このガロアによる理論の中であり、群の基本的過ぎる役割故か、
ガロア自身の努力も含め、認識されるまでに相当の時間と労力がかかりました.
19世紀当時のフランスのアカデミーでさえ、ガロアの論文の重要さに気づいたのは
ガロアの死後のことでした.
時代の超最先端というのは、このようにすぐに理解されず、
むず痒い思いが伴うものなのかもしれません.
ガロアが偉大なのは、そのように超最先端において発見された群が、
その後の数学の発展において必要不可欠な道具の一つであったということです.
(注1)
ちなみに、タルターリアの時代は、負の数の理解はそれほど進んでいなかった.
なので、3次方程式といってもさまざま形があり、上で書いたような1つではなく
いくつかの項が移項されたものや、いくつかのパターンがあった.
もちろん負の数の平方根についてもよく理解されていなかったので、
3次方程式の解法を教えられたとされるカルダノもその意味が分からず、
タルターリアにその意味を聞いたりしています.
虚数が現れ始めたのは、17世紀くらいで、最終的に虚数を含めた複素数が
意味のあるものであると認識されたのは、18世紀くらいで、
ガウスによる代数学の基本定理(1799)において結実されます.
(注2)
一般の3次方程式はタルターリアが最初にそれを解き、
その当時3次方程式の解法の先取権
を巡って争っていたカルダノにその解法を教えてしまいます.
もちろん、タルターリアもタダで教えたわけではなく、
カルダノがお金に困っていたタルターリアに資金援助をするという名目、
さらに、だれにも教えないという条件付き、さらに、数式ではなく、
それを詩にして渡したという慎重ぶりです.
それを聞いてカルダノが勝手に発表して(「偉大なる術」)自分の手柄にしたとされていますが、
実は、タルターリアより前に、デル・フェッロが独力で解いており、
その死後、未発表手記として確認されています.
デル・フェッロが発表しなかったのは、それを盗まれるのを惜しんだからか、
死が近づいておりその体力がなかったからか?
数学者はいつでも、名声を得たいがために、重大な仕事は
自分一人の手柄としたい生き物なのです.
「偉大なる術」では、タルターリアとデル・フェッロが独立に3次方程式の
解法に至ったと書かれており、現代では、
3次方程式の解法はカルダノの方法として知られています.
(注3)
一般の4次方程式が、加減乗除とべき根を取る操作で解にたどり着いたフェッラーリ
はカルダノの弟子です.
[参考文献]
この理論はどのようにして生まれたのか、
ガロア理論の動機に至るまでを説明してみます.
代数方程式(高校生でも知っている2次方程式や3次方程式など)
の解の形は一体どのようなものなのだろうか?
という自然な問いに対する話です.
以下、方程式の係数は有理数もしくは実数としておきます.
1次方程式の場合
まず、$x$ を変数として、$a$ はゼロではない有理数とし、$b$ を有理数としたとき、
$$ax+b=0$$
を1次方程式といいますが、求める $x$ は、$x=-\frac{b}{a}$ です.
大事なことは、この答えの形 $-\frac{b}{a}$ は、係数 $a,b$ の加減乗除だけを
使って得られているということです.
加法がないと思われるかもしれませんが、上のようなすっきりした形でなくても、
$ax+b=c$ を考えれば、解は $x=\frac{c-b}{a}$ のように、加法も入ります.
これはさほど重要なことではありませんが...
気になる問題が何かというと、方程式が与えられたときに、
その答えは方程式(の係数)からどのように構成されるかということです.
つまり、方程式の係数を決めれば、その係数の組み合わせから、その答え $x$ があるはずです.
どのような範囲の数を見ておけばその方程式の答え(解)が見つかるのか
ともいえます.
1次方程式の場合はその答えは、加減乗除ということなのです.
1次方程式の係数が有理数であれば、解の形は有理数の加減乗除なので
解は再び有理数ということになります.
有理数の加減乗除はまた有理数になることを、有理数は加減乗除で閉じているといいます.
一般に加減乗除で閉じているような数の集合を体といいます.
正確な体の定義はwikipediaでも見てくてださい.
つまり、体とは、加減乗除だけで得られる数の範囲ということになります.
もちろん加減乗除をする回数は有限回です.
たとえば、実数全体や複素数全体も加減乗除で閉じていますので、体の一例です.
わかったことは下の定理です.
定理
ある体上の1次方程式の解はその体上に必ず見つかる.
つまり、有理数を係数とする1次方程式の解は必ず有理数であるし、
実数を係数とする1次方程式の解は必ず実数です.
2次方程式の場合
次に、$a,b,c$ を有理数として、
$$ax^2+bx+c=0$$
を考えます.$a\neq 0$ となるとき、この方程式を2次方程式といい、その解は、
$$x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$$
として知られています.高校の教科書にあるような式変形で簡単に得られます.
この形をよく見てみると、加減乗除以外にルートという操作が入っています.
ルートを取るという操作は、体では一般に閉じません.
たとえば、2 は有理数ですが、そのルート $\sqrt{2}$ は有理数ではありません.
つまり、2次方程式の解を探そうとすると、元の体上には(一般には)存在しない
ということになるのです.
特に、
定理
(一般の)2次方程式は、係数の加減乗除だけでは解を構成することはできない.
しかし、加減乗除とルートをとる操作を含めれば解を構成することができる.
一般の、とつけたのは、すべての2次方程式が加減乗除だけでは構成できないわけ
ではないからです.
2次方程式でも、加減乗除だけでできるものあれば、そうでないものもあります.
たとえば、$x^2-(a+1)x+a=0$ という2次方程式は、$x=1,a$ が解ですので、
係数の加減乗除から作ることができます.
この定理の証明は、さきほどの例 $x^2-2=0$ を持ってきて、$\sqrt{2}$ が有理数ではないという
ことさえ認めれば、有理数の加減乗除ではせいぜい有理数しか生まれない
(加減乗除で閉じている)ので、定理が成り立つことになります.
後半部分は解の公式の存在がそれを表しています.
まとめると、2次方程式は、係数の加減乗除の他にルートをとる操作を加えれば
得ることができます.
ルートをとる操作は普通、体の中で閉じていないので、
解は係数体を拡大した他の体の中に構成されます.
3次方程式の場合
同じように $a\neq 0$ として、$a,b,c,d$ を有理数として、3次方程式
$$ax^3+bx^2+cx+d=0$$
を考えます.
この方程式の解を見つけなさいという問題は、ある年代の人類を悩ませてきました.
初めて一般解法に到達したタルターリアは16世紀の人で、2次方程式の
解の公式を知っていたというフワーリズミーは8~9世紀の人とすると、
かれこれ700年から800年ほど3次方程式の解に到達できないでいたのです.
かの有名なフェルマーの最終定理は350年間解けなかったわけだから、
それの倍以上の年月がかかったということになります.
その当時の数学者人口と今とを比べれば、この比較は全く意味は成しませんが...
元に戻ります.
まず、3次方程式の係数の加減乗除だけではその解までは到達できません.
(3次方程式の中に2次方程式が入っている.)
では、ルート(2乗根)をとる操作を含めれば解を構成することができるのか?
詳しくは書きませんが、結果は、加減乗除と、2乗根、3乗根をとる操作も含めれば、
解が構成できるということでした.
3乗根をとるとは、$X\to \sqrt[3]{X}$ なる操作です.
ただし、そのためには複素数という数を正しく理解する必要はありますが.
定理
(一般の)3次方程式は加減乗除とルート、3乗根をとる操作を繰り返せば
得ることができる.
一般に、加減乗除と2乗根をとる操作だけでは解に到達できない.
同じころ、フェッラーリによって、
定理
(一般の)4次方程式は加減乗除と2乗根、3乗根、4乗根をとる操作を繰り返せば
得ることができる.
一般に、加減乗除と2乗根、3乗根だけでは解に到達できない.
5次方程式の場合
一般の5次方程式は、
$$ax^5+bx^4+cx^3+dx^2+ex+f=0$$
です.($a\neq 0$)
自然な問いとして、一般の5次方程式は
加減乗除と $n$ 乗根をとる操作だけで方程式の解を得ることができるか?
となります.
$n$乗根を取る操作のことを、一般にべき根を取る操作といいます.
この問いに対する答えはこうです.
定理
$n$ を $n\ge5$ なる任意の整数とするとき、(一般の)$n$次方程式の解 $x$ は
加減乗除と べき根をとる操作だけでは得られない.
つまり、1次から2次に進むときに、解を構成するための操作として加減乗除の他に
ルートを取るという新しい操作を加えたのと同じように、
4次から5次に進むときにも、解を構成するためには
何かギャップがあることになります.
つまり、5次方程式の解を構成するのには、加減乗除やべき根をとる操作だけでは
本質的に足らないのです.
そこにギャップがあると初めて証明したのは、19世紀初頭のアーベルです.
そして、その何かを明確に突き止めたのがガロアです.
アーベルとガロアは大体同年代を生きた数学者です.
アーベルがした仕事は、$n$ を5以上とすると、一般の $n$ 次方程式の解は加減乗除と
べき根をとる操作だけでは得られないということですが
方程式によっては、加減乗除とべき根だけで解けるものもあるのです。
たとえば、$x^n-2=0$ はべき根だけで構成できます.
その差が何によるものか、アーベル自身も知りたいと思っていましたが、27歳の
若さで病死してしまいます.
ガロアは、方程式に付随するガロア群(今ではこう呼ばれている)のある性質
を見ることによって、その方程式が、いつ加減乗除とべき根をとる操作だけで解くことが
できるのかということを証明しました.
簡単に言えば、方程式に付随するガロア群とは、ある方程式の解全体を置換する
ある置換群(シンメトリー)のことです.
そのようなシンメトリーが、方程式が加減乗除とべき根で解けるかどうかの情報を
含んでいるというのは、通常な人間の生活の中では全く認識されませんから、
この発見は、ガロアの深い洞察の元なされたということに他なりません.
ちなみに、群というのは数学の用語で、数学概念として初めて登場させたのは、
このガロアによる理論の中であり、群の基本的過ぎる役割故か、
ガロア自身の努力も含め、認識されるまでに相当の時間と労力がかかりました.
19世紀当時のフランスのアカデミーでさえ、ガロアの論文の重要さに気づいたのは
ガロアの死後のことでした.
時代の超最先端というのは、このようにすぐに理解されず、
むず痒い思いが伴うものなのかもしれません.
ガロアが偉大なのは、そのように超最先端において発見された群が、
その後の数学の発展において必要不可欠な道具の一つであったということです.
(注1)
ちなみに、タルターリアの時代は、負の数の理解はそれほど進んでいなかった.
なので、3次方程式といってもさまざま形があり、上で書いたような1つではなく
いくつかの項が移項されたものや、いくつかのパターンがあった.
もちろん負の数の平方根についてもよく理解されていなかったので、
3次方程式の解法を教えられたとされるカルダノもその意味が分からず、
タルターリアにその意味を聞いたりしています.
虚数が現れ始めたのは、17世紀くらいで、最終的に虚数を含めた複素数が
意味のあるものであると認識されたのは、18世紀くらいで、
ガウスによる代数学の基本定理(1799)において結実されます.
(注2)
一般の3次方程式はタルターリアが最初にそれを解き、
その当時3次方程式の解法の先取権
を巡って争っていたカルダノにその解法を教えてしまいます.
もちろん、タルターリアもタダで教えたわけではなく、
カルダノがお金に困っていたタルターリアに資金援助をするという名目、
さらに、だれにも教えないという条件付き、さらに、数式ではなく、
それを詩にして渡したという慎重ぶりです.
それを聞いてカルダノが勝手に発表して(「偉大なる術」)自分の手柄にしたとされていますが、
実は、タルターリアより前に、デル・フェッロが独力で解いており、
その死後、未発表手記として確認されています.
デル・フェッロが発表しなかったのは、それを盗まれるのを惜しんだからか、
死が近づいておりその体力がなかったからか?
数学者はいつでも、名声を得たいがために、重大な仕事は
自分一人の手柄としたい生き物なのです.
「偉大なる術」では、タルターリアとデル・フェッロが独立に3次方程式の
解法に至ったと書かれており、現代では、
3次方程式の解法はカルダノの方法として知られています.
(注3)
一般の4次方程式が、加減乗除とべき根を取る操作で解にたどり着いたフェッラーリ
はカルダノの弟子です.
[参考文献]
- ジェロラモ・カルダーノ、偉大なる術(Ars Magna)、http://www.filosofia.unimi.it/cardano/testi/operaomnia/vol_4_s_4.pdf
- マーカス・デュ・ソートイ(冨永星訳)、シンメトリーの地図帳、新潮社